韓国では、2027年に施行予定の「犬食用終焉特別法」により、食用を目的とした犬の飼育や肉の流通が全面的に禁止される。一方、食糧事情が厳しい北朝鮮では、犬は依然として食用とされている。

そうした中、富裕層の間でプードルを飼うことが流行していると、米政府系メディア「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。

咸鏡南道の情報筋によれば、北朝鮮第2の都市・咸興では、昨年からプードルを飼う人がちらほら現れ始め、今年に入って急増したという。この情報筋自身も、首都・平壌から親戚が飼っていた1匹を譲り受けて連れ帰ったそうだ。

北朝鮮で「コスモリ(パーマ頭)」と呼ばれるプードルは、富と文明の象徴とされている。

「パーマ頭の犬は、犬肉レストランに売る目的で庭先で飼うような大型犬ではなく、家族と一緒に屋内で生活する小型の愛玩犬だ」
「家族が1日3食をとるときに、おかずを少し取り分けて器に入れ、餌として与えている」(情報筋)

このため一部の市民の間では、「裕福な家庭で飼われている栗色のパーマ頭の犬のほうが、並の人間よりも良いものを食べ、よい暮らしをしている」といった皮肉も聞かれる。

また平安南道の別の情報筋によると、平壌や地方の大都市では2000年代以降、白い毛の小型犬が一時流行していたが、近年はプードルに人気が移りつつあるという。これらの犬は、中国との密輸に関与する北朝鮮の貨物船を通じて持ち込まれており、栗色のプードルは1匹あたり約100ドルと高額で、「トンジュ(新興富裕層)でなければ手が出せない」(情報筋)とされる。

連れて歩いているのは、幹部の妻やトンジュの女性たちで、富を誇示する手段の一つになっている。

さらに、平壌郊外の平城では、中国からつがいで輸入したプードルを交配させて販売するブリーダーも現れているとのことだ。

これに対し当局は、「パーマ頭の犬を連れて歩くこと自体は統制しないが、ペットに服を着せたり、首輪に装飾を施したりすることが発覚すれば、資本主義文化を広める非社会主義的行為として取り締まる」と警告しているという。

もっとも、人間の権利すらまともに保障されていない北朝鮮で、動物の権利(アニマルライツ)を期待するのは無理な話だ。政権の都合ひとつで、愛玩動物の流行が突然終わる可能性も十分にある。

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