朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の974部隊(護衛司令部)は、金正恩総書記の身辺警護を担当している。北朝鮮において最優先されるべきは金正恩氏本人の安全であり、それだけに隊員の選抜基準は極めて厳しい。
北朝鮮には「成分」と呼ばれる身分制度が存在し、護衛司令部の隊員になるには、この成分が良好であることが厳しく問われる。
しかし、それだけでは不十分なようだ。韓国サンド研究所が運営するサンドタイムズが報じた。
護衛任務を担う者に求められるのは知力や体力だけではなく、最も重視されるのは「血筋」である。
北朝鮮事情に詳しい情報筋によると、護衛司令部の選抜規定には、両親の出身成分とあわせて「本父本妻」の子どもに限るという条項が設けられているという。情報筋は、「家庭の背景が良く、他の成績が優れていても、両親が法的な婚姻関係にないか、非嫡出子である疑いがあれば即座に除外される」と語った。
このような規定がある背景には、金正恩氏自身が正妻の子どもではないことが関係しているという見方があると、サンドタイムズは指摘する。彼の母・高容姫(コ・ヨンヒ)氏は、大阪・鶴橋出身の在日朝鮮人で、後に北朝鮮に帰国した人物だ。
また彼女は、故金正日総書記の正妻ではなく3番目の女性で、金正日氏とは法的な婚姻関係にはなかった。このような出自が、金正恩氏にとってコンプレックスとなっているとする見方が根強いというのだ。
北朝鮮で高官を務めた経験を持つ脱北者は、「正恩氏は自身が正妻の子ではないことに敏感で、ボディーガードの選抜にも『汚れのない血統』を重視している」と述べた。「矛盾しているようだが、自らが不安定な立場を経験したからこそ、警護人員の選抜にはいっそう厳格な基準を適用している」とも語った。