北朝鮮北部の林業事業所が、政治キャンペーンや思想教育に真面目に取り組まず、仕事を怠け、さらには韓国のラジオを聞いていたとして、当局から厳しく叱責された。
両江道のデイリーNK内部情報筋によると、朝鮮労働党両江道委員会は、「一部の幹部や労働者が、党の下した生産ノルマに怠慢で、資本主義的思考に浸り、政治的発言までするなど階級意識に欠けていた」として、中央からの緊急指示文を伝達した。
また、朝鮮戦争勃発の6月25日から始まる「反米闘争月間」は、北朝鮮にとって階級闘争――つまりは米国と資本主義を悪とする洗脳教育を強化する時期に当たるが、一部の若い労働者は「また反米闘争かよ」「仕事が忙しいのに、なんで階級教育なんかやるのか」と言ってサボっていた。
さらに彼らは、党から配られた教育資料や「労働新聞」をタバコの巻紙に使っており、党委員会はこれを「階級的自覚の欠如」として厳しく非難した。北朝鮮では、粗悪なわら半紙が一般的な中、「労働新聞」は上質紙ゆえ巻紙に最適とされるが、金正恩総書記の顔写真が頻繁に載っているため、政治問題になることもある。
加えて、退役軍人の労働者が韓国のラジオ放送を聞いていたとされ、次のような発言を平然と行ったという。
「祖国解放戦争(朝鮮戦争)は南朝鮮(韓国)が先に攻めてきたのではなく、わが国(北朝鮮)が始めた」
中央は、林業建設隊の一連の言動を「階級闘争の意義も理解せず、革命精神を喪失した売国思想の残滓」と断罪。両江道の党委員会も同事業所を「思想的に極めてたるんでいる」として、全幹部・労働者を現場で一斉に吊し上げる思想闘争会議を開くよう命じた。
あわせて「戦争老兵が生き証人として存在するのに敵の偽宣伝に騙されてデマを流すとは何事か」として、思想検閲チームを送り込み、老兵との面会集会を組織し、「斧を手にする前に心の雑草を刈れ」というスローガンの唱和、戦争回顧記を用いた学習会の開催など、細かすぎるほどの思想教育の徹底を指示した。
一連の再教育で仕事が滞り、国家的プロジェクトへの木材供給もストップしてしまうが、党委員会は再教育を優先した。それほど深刻だったのだろう。
とはいえ、こうした思想教育そのものもすでに形骸化しているとの指摘がある。熱が冷めれば、林業事業所の従業員たちは再び仕事をサボり、体制を辛辣に揶揄する日常へ戻るのだろう。