ロシアがウクライナ戦争で使用する弾薬のうち、約4割が北朝鮮製であるとウクライナ軍情報当局が明かした。中でも注目されるのは、これら北朝鮮製弾薬が当初「品質不良」と報告されていたにもかかわらず、最近になって「有効な武器」として評価が見直されている点だ。
ウクライナ軍情報局(HUR)のキリロ・ブダノフ局長は11日、ブルームバーグ通信のインタビューで、「ロシア軍の弾薬の約40%が北朝鮮から供給されたもの」とし、「これらは良い武器だ」と評価した。さらに、過去3カ月間のウクライナ軍の損失のうち60%が北朝鮮製兵器による攻撃に起因すると述べている。
この発言は、以前なら考えられなかったものだ。2023年12月、韓国の中央日報が報じた内容によれば、北朝鮮からロシア軍に供給された152mm砲弾には部品の欠落や火薬の品質不均一といった重大な欠陥が確認されていた。北朝鮮の砲弾は、過去の延坪島砲撃事件においても正常弾着率が30~40%にとどまり、不発弾も多かったという記録もある。
この“品質の飛躍”の背景として浮かび上がるのが、2025年上半期までに北朝鮮・慈江道(チャガンド)で実施された軍需工場に対する大規模な粛清である。デイリーNKの内部情報筋が6月末に伝えたところによれば、金正恩総書記の直接命令のもと、国家保衛省が道内の軍需工場を抜き打ち検閲し、不正や怠業、横領が発覚した23人が処刑・無期懲役・政治犯収容所送りとなった。
粛清対象となった工場は、江界市・熙川市・満浦市などにまたがる主要兵器生産拠点で、同地は長らく「北朝鮮の軍需心臓部」として知られている。
情報筋によれば、この粛清以降、工場現場には「極度の緊張感」が漂い、工員の無断欠勤や転出願いが相次いでいるという。一方で、生産管理体制の再構築が進められたことで、砲弾やロケット弾の品質が短期間で改善された可能性が指摘されている。
ウクライナ軍が実戦映像として公開した北朝鮮製兵器(75式多連装ロケット、M1991放射砲など)の使用例も増加しており、その威力や命中精度が向上していると分析されている。
専門家らは、北朝鮮が今回のウクライナ戦争を通じて、自国の通常兵器を「実戦テスト」する機会として活用していると分析している。兵器性能の向上とともに、現場からの実戦データが平壌にフィードバックされているのは間違いない。
北朝鮮とロシアは2024年に「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、軍事協力を一層強化している。弾薬供給は単なる物資支援にとどまらず、北朝鮮の軍需産業再編と技術実証の両面を兼ねる「国家プロジェクト」へと昇華しつつあるのかもしれない。