韓国における出生率の低下に伴い、軍の常備兵力(上兵)が減少する中、北朝鮮からの攻撃に対応するには常備兵力50万人を維持する必要があるとの分析が発表された。

この分析は、韓国国防省傘下の研究者らが執筆し、27日発刊された『国防政策研究』夏号に掲載された論文「韓国軍の適正常備兵力規模に関する研究」で示されたものだ。

執筆者のキム・ジョンヒョク陸軍未来革新研究センター博士らは、米軍の軍事ドクトリンである「最小計画比率」を基に、攻撃と防御における兵力の必要比率を算出したという。

この理論では、防御作戦では敵の兵力に対して3対1の優位性がなければ成功の可能性が低いとされているという。論文によると、2022年時点で北朝鮮の総兵力は約128万人、韓国側は50万人で、全体で約2.6対1、特に陸軍では3対1とされており、理論上の基準をかろうじて維持している状態だ。

研究チームは、「現状の出産率が続けば2040年には20歳男性の人口が14万人にまで減少し、兵力30万人すら維持が困難になる」と警鐘を鳴らした。

また、「現在の戦時作戦計画では、初期段階で数十万人の予備兵力動員と米軍の増援を仮定しているが、実際にこれが遂行される保証はない」と指摘。とくに北朝鮮の奇襲攻撃に即応できる即戦力として、常備兵力50万人の確保は不可欠だと強調した。

研究ではさらに、ロシアとウクライナの戦争を例に挙げ、ロシアが兵力で圧倒していたにもかかわらず、投入された地上部隊が実際には1対1.3と戦力不足であった点に着目。兵力の優劣が戦局を左右するとの認識を裏付けた。

研究チームは「北朝鮮が兵力削減をしない限り、韓国は50万人規模を維持すべきだ」とし、兵役期間の調整、徴兵制と志願制の併用、民間人力の活用など、多面的な国家的対策が必要と提言した。

国防部が発表した2025~2029年の中期防衛計画にも、常備兵力50万人の維持方針が明記されており、兵士から幹部への転換促進、非戦闘職への軍務員増員、AI・宇宙・電子戦など新分野への戦力集中が盛り込まれている。

兵力の質と量を同時に確保するための国家的な戦略が、今後の安全保障の鍵を握ることになりそうだ。

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