北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)が今月3日、中国・北京で開かれた「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念行事」に名前が「ジュエ」とされる娘を同行させたことをめぐり、韓国の独立系メディア「サンドタイムズ(ST)」は、体制内で進む「4代世襲」の布石の背景について、ある見方を伝えている。
STは、ジュエ氏が10代前半の年齢で国際舞台に姿を現した背景について「異例の早さは切迫した事情を示す」とし、金委員長の健康問題が大きく関係している可能性を指摘した。
韓国情報当局や専門家の分析では、金委員長の体重は140キロ前後に達し、心疾患の高リスク群に分類されるという。歩行や呼吸の様子、映像での体形変化が根拠とされ、薬の処方を変更したとの情報もある。
特に7月の「戦勝節」行事で見られた「膨らんだ後頭部」が健康異常の兆候ではないかとの議論を呼んだが、それがまた今回の動きで想起させられている。これについては、祖父・金日成主席が生前患った症状と重なるとの指摘も出た。ただし一部には「単なる肥満現象」との反論もある。
STはまた、専門家の声として「健康に全く問題がない方がむしろ不自然」との見方を紹介。韓国のパク・ウォンゴン梨花女子大教授は「金氏は睡眠時間が短く、喫煙や飲酒習慣も過度だとされる。生活様式を考えれば成人病を抱えている可能性は高い」と述べた。
一方で、北京の行事に臨んだ金委員長は階段を上がり、習近平国家主席と会談するなど比較的正常な様子を見せたことから、韓国当局は「健康問題と娘の同行は直結しない」と分析している。
しかし、今回の同行が後継者教育の一環である可能性は否定できない。
STは、金正恩自身が幼少期に後継者に内定しながら外交経験を十分に積めなかった経緯を踏まえ、「同じ限界を娘には繰り返させない意志の表れ」との専門家の分析を紹介。特に、世宗研究所のチョン・ソンジャン副所長は「国際社会に金主愛を次期指導者として印象づけ、本格的な外交教育を開始したとみられる」と指摘した。
今回の動きは、金委員長の健康不安説と絡み合い、北朝鮮体制の将来に関する憶測をさらに広げている。