北朝鮮当局が中国に派遣した自国労働者に対する思想教育を大幅に強化している。
中国の対北情報筋が30日、独立メディアデイリーNKに語ったところによれば、現在中国国内の派遣現場では週1回以上の集団学習と生活総和(総括会議)が欠かさず行われている。
しかしその裏には、昨年1月に中国で発生した、ある重大事件の「教訓」があるようだ。
情報筋によれば、金正恩訪中以前までは派遣労働者に対する教育の重点は外貨稼ぎと党資金確保の重要性に置かれていた。「国家計画を必ず完遂し、党資金に不足があってはならない」と繰り返し強調されていたのだ。だが訪中を契機に、単なる送金以上に指導者の外交活動を称賛し、これを「国家的栄光」として受け止めるよう求める方向へと大きく変わった。
一部の労働者は生活条件の改善を期待する声を出しているが、現実にはむしろ統制強化が目立ち、不安感が広がっている。宿舎の出入りは厳格に制限され、職場や食堂に至るまで監視体制が敷かれている。管理幹部は既存の組長・副組長に加えて点検員まで配置し、労働者の一挙手一投足を監督しているという。
それもそのはずである。2024年1月、給与の未払いとピンハネに怒り、中国の衣料工場で北朝鮮の女性労働者たちが起こした暴動は、北朝鮮当局の肝を寒からしめた。結局は抑え込まれたものの、この情報は世界に広まり、北朝鮮は著しく体面を傷つけられた。
複数の対北消息筋によると、暴動を主導した労働者約200人が拘束されたうえで北朝鮮に送還され、その一部は政治犯収容所に収監、残りは処刑されたという。
そのため、現在では派遣労働者の携帯電話の使用がいっそう制限され、中国人との私的接触は即時報告を義務づけられている。外出は5人単位でのみ許可され、事前承認のない活動は禁止だ。情報筋は「労働者たちは一方で国家的誇りと使命感を強要されるが、他方ではかつてよりも強い監視下に置かれている」と指摘する。
労働者派遣で外貨を安定的に稼ぐには、行動の統制が何より重要だと当局は考えているのだろう。
一方、北朝鮮当局は中国への派遣労働者数を大幅に拡大する方針だ。規模は昨年比で少なくとも3倍、多ければ5倍に達する計画とされ、コロナ禍で急減していた派遣人数が再び急拡大する様相を呈している。
情報筋は「派遣拡大は北朝鮮にとって外貨獲得機会の増大だが,、労働者個人にとってはいっそう厳しい統制と監視を意味する」と述べ、北朝鮮労働者たちが直面する現実の両面性を強調した。