韓国の独立系メディア「サンドタイムズ(ST)」によれば、北朝鮮がロシアに大規模な兵力を派兵したにもかかわらず、北朝鮮内部で期待された「戦争特需」は完全に裏切られたとの分析が出ている。前線で数千人規模の犠牲者が発生する中でも、ロシアからの食糧支援や経済的見返りは極めて乏しいという。

STによれば、韓国の衛星画像分析専門家、チョン・ソンハク韓半島安保戦略研究院画像分析センター長は28日、安全保障専門のインターネット番組「コード-Q」に出演して、北朝鮮は深刻な食糧難に陥る恐れが強いと指摘。現在の北朝鮮経済は「崩壊の前兆」を示していると警鐘を鳴らした。

北朝鮮当局は派兵を決定するにあたり、ロシアの食糧・エネルギー支援により慢性的な経済難を打開できると国内向けに宣伝してきたとされる。しかしチョン氏が解析した衛星データではこうした期待が外れたことが示唆されている。

チョン氏は「もしロシアからの食糧支援があれば、国境地域の物流拠点や輸送ルートで明確な動きが確認できるはずだが、いまのところ痕跡は一切ない」と述べたという。さらにSTによれば、今年の農業生産量は平年並みにとどまり、自給による不足分の補填は不可能な状況だと分析されている。

こうした危機は市場で露呈し始めている。STによると、平壌や咸興、新義州など主要都市では、ここ2週間ほどでコメ価格が50%以上急騰する異常事態が発生。鄭氏は「これは単なる需給不均衡ではなく、北朝鮮経済システム自体の崩壊兆候」と断じたという。

住民の間では当初、「ロシアが助けてくれる」という期待があったが、現状は物資が市場に出回らず、食糧確保のため高利貸しに頼る世帯が増加。市場機能が“麻痺状態”に陥りつつあるという。

心理面の変化も深刻だ。

STによれば、派兵直後に広がった期待は、時間の経過とともに「裏切られた」との不満や恐怖へと転じているという。犠牲となった若い兵士の血の対価が「米一粒として戻らない」現実は、体制支持基盤を揺るがす要因になっている。

専門家らは、2026年こそ北朝鮮経済の試練の年になると警告する。STによれば、政府が物価や為替の高騰を抑えるため強権的統制を強めれば、市場が完全崩壊し、過去の「苦難の行軍」を思わせる統制型配給制度が戻る可能性も否定できないという。

STは結論として、北朝鮮のロシア派兵は経済的利益をほとんど得られず、「失敗した賭け」になる公算が大きいと指摘。チョン氏は「現在の食糧問題は気候ではなく、経済システムの脆弱さが原因だ。来年は北朝鮮政権と住民にとって、生存がかかる最も過酷な年になるかもしれない」と述べたという。

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