米北朝鮮専門メディア「NKニュース」は1月26日、ロシアが北朝鮮に小麦粉540トンを送ったと報じた。数字だけ見れば支援に映るが、慢性的な食糧難に苦しむ北朝鮮の需要を満たすにはあまりにも小規模だ。

実際、昨年1月から7月までの北朝鮮によるロシア産小麦粉の輸入額は330万ドル(約48億円)に達し、前年同期比で50%増加した。北朝鮮がロシア産小麦粉への依存を強めていることは明らかだが、住民の評価は厳しい。

RFA(ラジオ・フリー・アジア)は昨年6月、北朝鮮内部でロシア産小麦粉への不満が噴出していると伝えた。「とうもろこし粉のように粘り気がない」「料理にならない」といった声が広がり、品質の低さが問題視されているという。

さらに深刻なのは、この小麦粉が単なる輸入品ではなく「派兵の見返り」と受け止められている点だ。派兵のニュースの後にロシア産小麦粉が流通し始めたことで、住民はそれを“対価”とみなしているという。「われわれの息子を戦場に送り出しておいて、結局こんな粉しか受け取れないのか」という不満は、体制への不信を直接刺激する。

韓国の独立系メディア「サンドタイムズ」は、北朝鮮が期待した大規模な経済的リターンは確認されず、むしろ危機が深まっていると報じた。象徴とされるのが最近の米価急騰で、主要都市で市場価格が短期間に5割以上上昇した。専門家はこれを市場機能の麻痺を示す危険信号とみる。

追い打ちをかけるのが中国との不協和音だ。中朝関係の冷却化は、北朝鮮のロシア派兵を契機に北ロ関係が急速に接近して以降、各方面で観測されてきた。

北朝鮮メディアは習近平主席への年賀状を報じながら名前に触れず、他国首脳と並列的に扱った。最大の後ろ盾への異例の冷淡さは、中朝関係の亀裂をうかがわせる。

昨年9月、金正恩氏が中国の抗日戦争勝利80周年記念行事に出席することが関係改善の転機になるとの見方もあったが、実際には関係はむしろ悪化したとも言われる。外交筋の間では、北朝鮮がその見返りとして受け取った実質的支援が砂糖1万9000トンにとどまったことへの不満が、内部で蓄積しているとの観測も出ているという。

ロシア派兵という危険な賭けに出た金正恩氏。だが返ってきたのは住民が怒りを爆発させる低品質の小麦粉と、目に見えない支援の空白だった。プーチンにも習近平にも「利用されただけ」という失望が広がれば、体制は内側から揺らぐ可能性がある。

届いた食糧は「たったこれだけ」。その現実が、金正恩政権を次なる局面へ追い込んでいるのかもしれない。

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