ウクライナが水中ドローン「マリチカ(Marichka)」の実戦配備が近いことを明らかにした。黒海におけるロシア海軍との戦いで、無人兵器が戦局を左右する現実を突きつける出来事であり、同時に北朝鮮が開発を誇示する水中核兵器「ヘイル」が、日本と韓国にとって無視できない脅威であることを改めて浮き彫りにした。

ウクライナ防衛産業関係者は2月3日、専門軍事メディアArmyRecognitionなどの取材に対し、「マリチカは戦闘任務に投入可能な状態に達した」と述べ、1年以上に及ぶ実地試験と改良を経て、実戦配備段階に入ったことを明らかにした。

マリチカは全長約5.5メートル、最大航続距離1000キロ、数百キロ規模の弾頭を搭載可能な自爆型無人潜水艇で、低速・低騒音で海底近くを航行する。港湾や停泊艦艇、橋脚などを水中から奇襲することを主目的とし、最大1週間にわたり海底で待ち伏せできる能力を備えるとされる。通常のレーダーや哨戒では探知が難しく、港内防御を無力化し得る点が最大の特徴だ。

この流れを象徴するのが、2025年末にウクライナ保安庁(SBU)が実施した水中ドローン「シーベイビー」によるロシア黒海艦隊の潜水艦攻撃である。ウクライナ側は、港湾内でキロ級潜水艦を損傷させたと発表し、史上初の「水中ドローンによる潜水艦無力化」として世界に衝撃を与えた。これにより、水中無人兵器が単なる試験的装備ではなく、戦略兵器として現実に機能することが実証された。

こうした状況下で再評価されるのが、北朝鮮が「核無人水中攻撃艇」として公表したヘイルの存在だ。北朝鮮は、同兵器が長距離を潜航し、港湾近傍で核爆発を起こして津波状の破壊をもたらすと主張している。従来は誇張や心理戦と受け止められることが多かったが、マリチカとシーベイビーの実戦投入により、水中ドローンによる港湾奇襲という構想自体は十分に現実的であることが示された。

韓国は仁川、平沢、釜山、蔚山といった主要港湾と工業地帯が沿岸部に集中し、日本も東京湾、大阪湾、伊勢湾など国家経済の中枢を港湾機能に依存する。水中ドローンによる港湾破壊は、都市攻撃以上に物流、エネルギー供給、産業活動を直撃し、短期間で国家機能を麻痺させる恐れがある。

核弾頭が搭載された場合、その被害は計り知れない。

対潜能力で高い評価を受ける日韓両国だが、その多くは外洋での潜水艦探知を想定しており、港湾内部での水中ドローン迎撃体制は十分とは言えない。ウクライナの戦例が示すのは、もはや「港にいれば安全」という常識が成り立たないという現実である。

マリチカの実戦配備は、海戦の様相を根底から変えつつある。北朝鮮のヘイルも、誇示用兵器から、日韓の安全保障環境を揺るがす「実質的脅威」へと格上げして評価すべき段階に入った。港湾防衛の再構築は、もはや先送りできない喫緊の課題となっている。

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