北朝鮮が対中姿勢を大きく揺らがせている。かつて中国の最高指導者を“軽視”するかのような異例の対応を見せたかと思えば、直近では関係重視へと急速に回帰した。

その振幅の大きさは、同国外交の本質を浮き彫りにしている。

北朝鮮メディアは新年に際し、習近平に送った年賀状を極めて簡略に扱い、名前すら明記せず他国首脳と並列的に列挙するにとどめた。これは大国の国家元首に対する公開的な侮辱であり、事実上、中国との関係を“格下げ”したとも受け取れる行動だ。

こうした対応は、単なる儀礼の問題にとどまらない。北朝鮮が伝統的な「血盟」関係から距離を取り、ロシアなど他のパートナーとの関係を強化する中で、中国への相対的な重みが低下していたことの表れとみられていた。実際、対露接近が進む中で、中朝関係は「冷却」さらには「亀裂」とまで指摘される局面にあった。

しかし、この流れは長続きしなかった。朝鮮中央通信によれば、金正恩総書記は10日の中国の王毅外交部長との会談で、対中国関係を「最優先的に重視」とまで踏み込み、中国の対内外政策への全面支持を表明した。特に台湾問題での「一つの中国」原則や多極世界構想への支持は、単なる外交辞令を超えた政治的メッセージと受け止められている。

この急速な姿勢転換の背景には、現実的な制約がある。北朝鮮にとって中国は依然として最大の貿易相手であり、エネルギー供給や外貨獲得の面でも不可欠な存在だ。関係悪化が長期化すれば、制裁下の経済は一層圧迫され、体制維持そのものに影響しかねない。

さらに、来月に予定される米中首脳会談も見逃せない。中国にとって北朝鮮は対米戦略のカードであり、北朝鮮側も中国の後ろ盾を誇示することで交渉上の立場を補強できる。双方の利害が一致する中で、「冷却」から「再接近」への流れが一気に進んだとみられる。

もっとも、表面的な蜜月の裏に緊張が残る可能性は否定できない。朝鮮中央通信の報道でも、双方は国際問題について「立場を披歴」「見解を表明」と記すにとどまり、「一致」とは表現されなかった。これは、ウクライナ戦争や対米戦略をめぐる微妙な温度差の存在を示唆するものとも読める。

北朝鮮はこれまでも、中国への依存と自立志向の間で揺れ動いてきた。今回の一連の動きは、その振幅がいかに大きく、かつ状況依存的であるかを改めて示したと言える。結局のところ、どれほど“侮辱”とも取れる態度を見せたとしても、最後に戻るのは中国――。北朝鮮外交の帰結は、常に現実主義に収斂している。

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