国内旅行をする人が増えている。2014年には5億9522万人だった日本人の国内旅行者数は、15年6億472万人、16年6億4108万人、17年6億4720万人と、ここ数年で5000万人近く増加した(観光庁「旅行・観光消費動向調査」平成30年2月)。

 では、国内旅行の候補に挙げられる、観光で行きたい人気の都道府県はどこなのか。ブランド総合研究所が行った「都道府県観光意欲度ランキング2018」を見ていこう。

 このランキングは、47都道府県と国内1000の市区町村を対象に、認知度や魅力度、イメージなど全84項目からなる「地域ブランド調査2018」によるもので、今年で実施は13回目。「今後、各自治体に観光や旅行に行きたいと思いますか?」という問いに対して、「ぜひ行ってみたい」を100点、「機会があれば行ってみたい」を50点、「どちらもいえない」「あまり行きたいとは思わない」を0点として、加重平均した数値を算出した(有効回答数:全国3万24人)。

観光したい都道府県1位は北海道!
北関東+埼玉はワースト4位に

 2018年の都道府県「観光意欲度ランキング」1位に選ばれたのは北海道で、なんと09年から10年連続のトップとなった。点数は11年以降継続的に低下傾向にあったが、16年を底に下げ止まっている。

 2位は京都、3位沖縄県、4位東京都、5位奈良が続き、上位5位の顔ぶれは09年から全く同じで変わっていない。

 一方、ランキング下位に目を移すと、茨城県が10年連続最下位という結果になった。同じ北関東の栃木県は44位、群馬県は45位、そして埼玉県は46位と、北関東3県と埼玉県がワーストを占める構図も前年と同じだった。

「観光で行きたい」と思わせる要素
効果があるもの、あまりないものとは?

 同調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長によると、ランキングの元になった観光意欲度の点数は上昇傾向にあり、「2011年の震災をピークに2015年までダウントレンドにあったが、2016年からは地方創生ブームを背景に観光意欲度は上昇している」ことが背景だという。

 では、観光意欲度アップにはどのような要素が寄与しているのか。田中社長は、(1)数年以上の長期的な効果が見込める要素と(2)1年ほどの短期的な効果で終わる要素、そして(3)瞬間的な効果しか見込めない要素の大きく3つに分けられると語る。

 まず、数年以上の長期的な効果が見込める要素が「世界遺産」だ。例えば、中尊寺金色堂を含む「平泉の文化遺産」を要する岩手県は、2011年の世界遺産登録ながら未だに順位を上げており、今年は昨年31位から24位へと順位を上げた。また、今年「長崎と天草地方の潜伏キリシタン」が世界遺産登録された長崎県は、昨年12位から9位となり、今後も上昇が期待できる。

 それに対して、効果が1年程度の短期で終わりやすいのが、JRグループ6社と自治体が協働で実施する大型観光キャンペーンの「デスティネーションキャンペーン」だ。

「栃木県は今年の4月から6月にデスティネーションキャンペーンを打ち、昨年もそのプレキャンペーンを行っていた影響から、昨年45位から1位アップの44位に。県内でも有数の観光地を有する日光市は、市区町村別の観光意欲度ランキングで昨年20位から今年は19位になった。しかしこれは需要の先食いでもあるため、来年以降は下がってしまう可能性もある」(田中社長)

 そのほか、大河ドラマや朝ドラ(NHK連続テレビ小説)も、「放映されている1年前後の短い期間での効果しか見込めなくなっている」(田中社長)という。

 こうした長期や1年単位で効果が見込めるものに対し、田中社長が意外と効果が見込めないと語るのが「映画」だ。

「映画の舞台になった場所は、公開直後は反響があるが、公開が終わると効果がすぐに薄れる傾向がある。また、撮影場所だけの“局地的”な盛り上がりで終わり、地域全体に広がりづらいという問題もある」(田中社長)

 国内旅行への関心が高まる中、観光意欲を刺激する様々な要素は意外とたくさんある。それらを上手に生かして観光客を増加させられるか、各自治体の実力がこれからますます試されそうだ。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 林 恭子)

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