ユニクロのひとり勝ち状態が続いていた日本のアパレル市場に、変化の兆しが見えてきた。昨年8月以降、ユニクロの国内既存店売上高は5ヵ月連続で前年割れする一方、オンワード樫山など百貨店を主要な販売チャネルとするアパレルメーカーが息を吹き返しつつある。
市場の勢力図は変わるのか。

 初売り初日の1月2日、銀座三越は買い物客でごった返していた。初売りがにぎわうのはいつものことだが、今年は昨年とは様相が違っていた。1万円以下のお手頃価格の福袋ではなく、3万円、5万円という高額の福袋が飛ぶように売れていく。婦人服の人気ブランドのショップでは、数万円の福袋が午前中で完売となった。

「百貨店に顧客が戻ってきた」(保元道宣・オンワードホールディングス執行役員)──。

 販売チャネルの約7割を百貨店が占めるオンワードホールディングス傘下のオンワード樫山では、2010年に入って百貨店向けの基幹ブランドが軒並み好調に推移しており、3~11月の売上高は、「23区」が前年同期比6%増、「自由区」同3%増、「ICB」同6%増といずれも前年を上回った。10月以降はオンワード樫山全体で前年比プラスに浮上している(グラフ参照)。


 アパレル大手のワールドも足元の販売はほぼ前年並みで推移している。百貨店向けの主力ブランドである「UNTITLED」や「TAKEO KIKUCHI」は、10~12月の累計売上高が前年比プラスとなった。

 販売チャネルの約9割を百貨店が占める三陽商会でも、10年は人気ブランド「マッキントッシュ フィロソフィー」が前年比30%増と好調で、 7~12月累計の店頭販売は前年を下回ったものの、1月はほぼ前年並みに推移している。
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 復調の兆しが見えてきた大手アパレルとは対照的に、不振に陥っているのがユニクロだ。
前ページグラフで示したように、同社の国内既存店売上高は、昨年8月以降12月まで5ヵ月連続で前年割れしている。その結果、10年9~11月の四半期決算は減収減益となり、11年8月期決算の売上高も、期初予想より100億円低い8460億円に下方修正された。

 ユニクロは09年、機能性肌着の「ヒートテック」が大ヒットするなど絶好調だったため、前年比較のハードルが高い。国内既存店の売上高が伸び悩むことは織り込みずみだったが、業績の下方修正は想定外だったに違いない。

 ユニクロの失速と大手アパレルの復調。アパレル市場でいったい何が起きているのか。

 08年のリーマンショック後、ユニクロは三つの追い風によってひとり勝ちの構図を確立した。不況による消費者の低価格志向、ヒット商品、ファストファッション(流行のファッションを低価格で大量に短いサイクルで販売する業態)ブームである。

 リーマンショック後の世界同時不況で消費マインドが一気に冷え込み、消費者はひたすら価格を追い求めるようになった。そのような環境下で、低価格と高品質を両立させたユニクロが消費者の心をつかんだ。

 また、年々改良を重ねてきたヒートテックが大ヒットし、08年には2800万枚、09年には5000万枚を売り上げた。

 さらに、08年秋以降、スウェーデンのH&Mや米FOREVER21など外資系ファストファッションが続々と日本に上陸し、消費者の低価格志向に拍車をかけたこともユニクロにプラスに働いた。


 ところが、10年に入って少しずつ風向きが変わり始める。

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