イケメンであれ美人であれ、ルックスに優れた人を配偶者に持つと、何かと周囲からとやかく言われることが多い。本人たちがまったく気にしない場合もあるが、当然のことながら周囲のやっかみや詮索が煩わしく感じられることもある。

妻が美人過ぎた場合、夫はどうなるのか。いくつかのケースから探ってみたい。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)

いいことばかりではない美人妻
試される夫の器・夫婦の絆

 現代の結婚は自由恋愛の途上にあるのが主流であるから、配偶者を自分で選ぶことができる。配偶者のルックスがいいと毎日見ていて麗しいし、他人に対しても自慢できる。配偶者のルックスは良ければ良いほど素晴らしい……と考えるのはいささか早計である。

「美人は三日で飽きる」という古来伝わる、現代ではなんとかハラスメントに当たりそうなフレーズもあるし、実はメリットばかりではないのがナイスルックスの配偶者である。配偶者のルックスが良いと、器と絆が試されるのである。

 これはまた聞きの話であるから詳細は定かでないが、「モテモテ妻と結婚した男性が、妻の社交性と魅力に嫉妬した揚げ句浮気して離婚に至った」ケースがあったそうである。夫のやり場のない葛藤は彼に、出口・逃げ道として不倫を選択させたのが愚かといえば愚かだが、そうせざるを得なかった切迫した苦しみが本人にはあったのであろうと推測される。

 現代の倫理的価値観からすれば許されない不倫という決定打を放った夫が完全なる悪で、「勝手に嫉妬して暴挙に及んだ夫」と見れば被害者は順当に妻となるが、「夫に配慮なく異性と仲むつまじくすることをやめなかった妻」と見れば被害者は夫である。

 詳細や事の背景がわからない以上、このケースに関してはどちらとも断定できないが、美人妻は夫を狂わせ得る可能性があることがよくわかる事例であるといえよう。

 かような危険な蜜・美人妻を持つ夫たちが、自分が置かれた状況にどのように立ち向かっていっているのか、他のケースを紹介したい。

妻を人前にさらすことが苦痛
加速する束縛の果て

 Aさん(38歳男性)の妻Bさん(32歳女性)はモデル経験がある美人である。手足はスラッと長く、顔立ちは個性的であり、ちょっとただならぬ雰囲気をまとっている。社交性は人並みだが、若い時分はクラブに踊りに行ったりもしていたからそれなりに「開けた性格」である。

 一方、その夫Aさんは芸術家肌で、職業はレコーディングエンジニアであった。長身で物腰やわらかいが、顔つきに芸術家気質が表れているようで、こちらもただならぬ雰囲気の人物であった。

 Aさんは実際会うと、優しく、ジェントルで、おそらく本人が繊細だからであろう、他人にも細やかな気遣いができる人だったが、Bさんの前では別人格が顔を出すらしかった。

 AさんはBさんに対する束縛が激しく、交際時からそうだったが、結婚後はそれがいよいよ極まった。BさんがGPS機能で居場所を常にAさんに知らせるのは序の口で、帰宅後、Aさんに「いつどこで、誰と何を話して、何をしたか」を報告する義務が課せられた。

 そこに自分以外の男性の気配があるとAさんは狂乱した。

 例えばBさんが友人の結婚パーティーに出席すれば「誰か男と話したか」とAさんが質問する。Bさんが「話していない」と答えてもAさんは「いや、一言くらい話したはずだ」とBさんの言い分を認めず、怒りまくって壁やテーブルを時として泣き叫びながら破壊した。

 Aさんの一連の振る舞いは立派なDVに該当するが、BさんはそんなAさんに苦しめられつつ彼を変わらず愛していたから、2人の関係を共依存と指摘する人もいた。

 やがて、2人はAさんの強い希望もあって、人里離れた山奥に一軒家を買ってそちらに引っ越していった。Aさんは美人な妻を他人の目に極力触れさせたくなかったのである。

 Aさんをよく知るCさん(41歳男性)はこう語った。

「Aを若い頃から知っているが、交際相手に対して昔からやや束縛気味なところはあっても、あそこまで極端ではなかった。

 Bさんは彼の付き合った人の中で断トツ“個性的な美人”で、それでAはおかしくなったのだと思う。Bさんは個性的なルックスゆえに多くの男性にモテるタイプではなく、むしろ一見近寄りがたいタイプの美人だったが、それがAの不安を解消する材料とはならなかったようだ」(Cさん)

 Bさんの美人さは夫婦にとって幸いであったのか、災いであったのか。とらえ方次第でいかようにも景色が変わる万華鏡のごときケースである。

言い訳に使われる妻の美人さ
夫はどこまで本気なのか

 Dさん(42歳男性)は女性関係が激しく、散々の放蕩の揚げ句、一回り年下のモデル女性と結婚した。こちらの女性はBさんと違って男好きするタイプで、Dさんによればよくモテたし、「自分の知らないところで浮気をされている可能性はあるかもしれない」(Dさん)だそうである。

 Dさんは彼女との結婚を決めるにあたって1つの決意をしていた。「妻が美人で男に人気があるから、自分も妻に悟られないよう機会があれば浮気をしよう」というものであった。

 おそろしく身勝手な決意であるが、Dさんは以下のような自己弁護をしている。

「美人な妻という存在は、夫からすると常に浮気を心配してしまうから心臓に悪い。妻を家に閉じ込めることができれば心配する必要はなくなるがそれは現実的ではない。

 では心配をなくすにはどうすればいいかと考えて、『浮気をされた時のダメージを減らせばいいのだ』と。相手に浮気をされても自分もしていれば、自分がしていない時に比べてダメージは少なくなるはず」(Dさん)

 浮気癖のある男性の都合の良い言い訳に聞こえるが、本人が本気でそう信じているのなら、こうなってしまったのも「妻が美人であるがゆえ」なのであろうか。

>>(下)に続く

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