2学期から対面による授業が学校でも塾でも再開されるようになった。10月に実施された中学受験の4つの模試で記された志望校の志願状況から、2021年入試の人気校と穴場校の最新情勢を見ていこう。
2020年並みになりそうな受験生数
千葉や埼玉では、早ければ四十数日後に受験本番を迎える2021年の首都圏中学入試。追い込み時期に入り、志望校の過去問を解くなど受験生はラストスパートに向け準備に余念がない時期ではあるが、併願校をどうするか悩ましいかもしれない。
以前、新型コロナ禍で休校が続く7月に、塾に通う小6生の動向から2021年の受験がどのようになりそうか推測したことがある。当時、中下位校の受験生は減少するのではないかと懸念された。
また、9月に実施されたSAPIX、四谷大塚、日能研、首都圏模試という4つの模試で記された入試ごとの志望者数の合計から、2021年入試の人気校・穴場校を見た。これらについては必要に応じて見直していただきたい。
今回は、10月に実施された4つの模試から最新の志願状況を探る。まずは男子受験生の動向を前後編に分けて取り上げる。次回は女子受験生についても同様に、それぞれ動きのある学校を中心に見ていきたい。
初夏には受験生が減少するのではないかと懸念されたが、10月模試の参加状況を見る限り2020年入試並みに受験生が集まると見込まれている。全体の傾向として、3つのことが指摘できそうだ。
まず、安全志向である。
次に、日本大学の付属・準付属校の人気である。これは男女共に言えることなのだが、日大のある教授が「日大は日本の平均的な大学」と指摘したように、受験生にとっては、ちょうどいい加減の学校といえる。日大への進学を確保した上で他大学に挑戦をするような“半付属校”的な要素も持ち併せており、このあたりは女子受験生に特に受けているようだ。男子受験生には日本大学豊山中学校・高等学校の人気上昇傾向がとりわけ顕著である。
そして、川を越えない傾向である。これは例年、東京や神奈川の受験生がお試し受験として、荒川や江戸川を越えて埼玉や千葉の学校の入試に集まる傾向が、2021年入試では抑制気味になりそうという見通しである。
1月入試で志願者が減りそうな入試
では、埼玉と千葉の1月入試の状況から見ていこう。
先述したように、多くの学校が2020年よりも受験生を10~20%以上減らしそうな情勢にある。密を避けたいという東京の受験生の心情の反映とみられる。
4つの模試の志願者数合計で増減を見るが、1000人以上の入試と50人に満たない入試とでは単純に増減率を並べて比較しても実態を正確に表さないと思えるので、その点に注意を払いながら見ていきたい。
埼玉の学校で1000人を超えるのは1月10日の栄東(1回A)と25日の立教新座(1回)である。前者が10%強、後者が10%の減少となっており、実質倍率も前者が1.3倍程度、後者も2.2倍程度まで緩和することが見込まれる。
同様に減少が見込まれる入試と減少率を順に見ていこう。
100人以上の志願者がいる埼玉の学校では、1月10日の城西川越(1回)、10日午後の城北埼玉(特待)、12日の青山学院大学系属浦和ルーテル学院(2回)、14日の大宮開成(2回)はおおむね10%、11日の獨協埼玉(1回)が10%台半ば、10日の開智(1回)、13日の開智(先端A)、16日の栄東(特待選抜)が20%ほど、それぞれ減少傾向となっている。
同様に千葉の学校を見ると、十数%の減少が見込まれるのが例年1000人超えながら今回は大きく減らした20日の市川(1回・英語)、県内最難関校となった22日の渋谷教育学園幕張(1回)、それに隣接する昭和学院秀英(1回)、23日の芝浦工業大学柏(1回)といったところだ。10%台半ば~20%前後の減少は、21日の麗澤(1回)、25日の成田高校付属(一般)、20%台半ば~30%前後では10日午後の昭和学院秀英(午後特別)、26日の千葉日本大学第一(Ⅱ期)、27日の芝浦工業大学柏(2回)が挙げられる。
これは茨城だが、10日の茗渓学園(1回)も10%ほど減少の見込みだ。
1月入試で志願者が増えそうな入試
埼玉と千葉の入試はみな減少傾向なのかといえば、必ずしもそういうわけではない。10%以上増加傾向の入試もわずかではあるが存在する。
伸び率が大きいところでは、10日の青山学院大学系属浦和ルーテル学院(1回)が約60%増で、志願者数を100人台に乗せた。その結果、実倍率も4倍近くになりそうだ。
2020年入試でも大きく伸びた大宮開成は、10日の第1回でも約20%の伸びが予想され、実倍率も3倍台に乗せそうな勢いである。
志願者数50人前後ではあるが、17日の獨協埼玉(3回)は30%以上の増加となって、実倍率が9倍近くなりそうだ。
1月入試についてはこのように、基本的に緩和傾向にあるので、地元の受験生にとっては少しだけ受けやすくなりそうといえる。
【訂正と解説】1ページ「次に、日本大学の付属・準付属校の人気である」の箇所
「順付属」と記載されていましたが、正しくは「準付属」です。訂正いたしました。日本大学の系列校の場合、大学・学部に属する「正付属」と、日本大学とは学校法人を別にする一般には系属校と呼ばれる「準付属」とに大きく分類されます。