前回は前後編に分けて、10月模試の結果に基づき男子受験生の志願動向を見た。今回は女子受験生についてである。

9月模試での人気校穴場校とはどのように変わったのか、比較しながら気になる学校の最新情勢をご覧いただきたい。(ダイヤモンド社教育情報)



女子受験生に見られるいくつかの傾向



 全国的に新型コロナウイルス感染者数が増加し、第3波の到来を日本医師会の会長が口にするなど、受験生には過酷な環境が続いている。東京都は11月末から飲食店の夜間営業の短縮を再度要請するなど感染拡大の防止に躍起になっている。年明けにはどのような状況になっているのか、全くもって予断を許さない。



 前回に続き、10月に実施された中学受験の4つの模試(SAPIX、四谷大塚、日能研、首都圏模試)で記された志望校の志願状況から、今回は2021年首都圏入試の女子受験生最新情勢を見ていこう。



 この秋の女子校の学校説明会は、そのほとんどがオンラインで実施された。小5の時に学校説明会や文化祭などに参加していれば学校の雰囲気に触れる機会もあったのだろうが、現状では志望校に足を踏み入れないまま入試に臨むことになる女子受験生も少なくないと思われる。



 それでも第一志望校に加えて、併願する学校も選ばなければならない。10月模試への参加状況を見る限り、2020年入試並みに2021年も受験生が集まると見込まれている。



 前回、全体の傾向として「安全志向」「日大系列校人気」「川を越えない」の3点を挙げた。女子受験生にもこの傾向は当てはまるのだが、女子の場合にはもう何点か加えておく必要がありそうだ。



 まず、女子の上位校受験生に人気の青山学院の入試日の変更である。2020年はいつもの2月2日が安息日である日曜日だったため、入試を3日にずらしていた。

それが2021年は元の2日になる。



 次に、女子伝統校の人気の復活である。特に、山脇学園と跡見学園が目立つ。背景には親の世代のブランド校が再評価を受けている様子が垣間見える。



 そして、女子受験生により強く表れる隔年現象の傾向である。前年の実倍率が高いとどうしても敬遠気味になるのだ。ここはあえて逆張りで、前々年の倍率も見て考えることも念頭に置いた方がよいのかもしれない。



 もう一つ付け加えるなら、共学の進学校への志願動向である。成績上位者に女子生徒が並ぶのはいまや珍しくないのだが、新興の共学進学校では、英語を活用する能力に優れている女子生徒がけん引役となっている例が珍しくない。女子受験生の上位層が、共学校に対してどのような向き合い方を2021年はするのかという点が興味深い。



1月の志願者が増えそうな入試



 ここでは模試での志願者数が前年と比べて10%以上増減した入試について触れていく。基本的に志願者数合計100人以上の入試を対象とするが、それ未満でもおことわりを入れて扱うこともある。



 まずは1月に入試が行われる埼玉と千葉から見ていこう。

この両県では、上位進学校は公立中高一貫校も含め、圧倒的に共学校で占められている。別学校は埼玉の浦和明の星女子くらいしか思い浮かばない。ということで、共学校を必然的に受験することになる。



 最初に目に飛び込んでくるのが青山学院大学系属校となった浦和ルーテル学院(さいたま市緑区)だろう。JR京浜東北線「北浦和」駅近くから移転して交通面は不便になったとはいえ、男子受験生にも人気で、女子人気はさらにすごい。1月10日の1回は志願者数が倍増、このままいくと予想倍率は4倍を超えるかもしれない。12日の2回もやはり倍増で100人に乗った。こちらは同10倍に届くかもしれないほどの大人気ぶりだ。



 埼玉にも人気の午後入試が出ている。川越市にある11日午後の星野学園(2回)は+70%増の志願者数100人乗せで、予想倍率は3倍を超えそうだ。



 千葉では、船橋市にある千葉日本大学第一(I期)が+20%台半ばでひとり気を吐いている。ついで柏市の麗澤(1回)が+20%弱で予想倍率が4倍を超えそうな勢いである。



 志願者数合計100人以上で前年比10%以上の増加を見せている入試は以上である。これだけではあまりにも寂しいので、50人以上に条件を緩和して少し眺めてみよう。



 伸び率の多い順に並べると、+50%弱が13日のさいたま市岩槻区にある開智(先端A)、+20%台半ばには11日の星野学園(理数2回)、+10~15%の間にはさいたま市大宮区にある大宮開成(1回)と嵐山町にある大妻嵐山(1回)が顔を出し、いずれも10日の入試となっている。



 倍率緩和傾向の学校と入試については次のページで触れるが、このように埼玉も千葉も女子受験生にとっては総じて受けやすくなっていると考えていい。



 ここで公立中高一貫校の情勢についても触れておきたい。2020年はどこも高倍率だったこともあり、志願者数は減少気味なのだが、1月19日の市立浦和は100人に満たないとはいえ、+20%台で倍率が10倍に乗るかもしれない。



 参考までに、埼玉と千葉の他の公立中高一貫校についても見ておこう。いずれも志願者数合計が100人に満たないので振れ幅は大きく出ている。1月23日の入試では、2020年開校の人気校だったさいたま市立大宮国際が▲40%と大きく減らしているが、予想倍率はそれでも3倍である。24日入試の県立千葉は▲20%でも同7倍、県立東葛飾は▲50%台半ばと半減しても同4倍台半ばとなっている。千葉市立稲毛も3分の2の水準に落ち込んではいるものの同6倍弱と厳しい入試である。



1月の志願者が減りそうな入試



 さて、ここからは2020年より志願者が減り、倍率が緩和しそうな入試を見てみよう。

この中に「お得」な学校が含まれているに違いない。偏差値のみならず校風も勘案して志望校選びの参考にしていただきたい。



 例年全国最多といっていい受験者を集めるのが栄東(さいたま市見沼区)である。2021年入試では、受験生の密を避けるため、校庭を駐車場として開放、時差を設けて入試を始めることで最寄り駅からの通学路上での受験生の分散を図るといった方針を打ち出している。



 1月10日のメインとなる1回Aは▲20%強で、現時点の予想倍率は1.3倍程度とだいぶ緩和される。18日の2回もやはり▲20%強で予想倍率では2倍を割りそうである。東京方面から荒川を越えない傾向が影響を与えたといってよさそうだ。



 千葉で最大級の受験生を集めるのが、1月20日に行われる市川市にある市川(1回)だ。例年、幕張メッセが受験会場となることで知られているが、2021年入試は会場を1.5倍に拡大し、密を避ける。こちらは▲10%台半ばと見込まれ、予想倍率も2倍台半ばとなりそうだ。



 同じく千葉では、習志野市にある21日の東邦大学付属東邦(前期)が▲10%台半ば、22日の千葉市美浜区にある渋谷教育学園幕張(1回)が▲20%台半ばで予想倍率が3倍を割りそうで、いずれもだいぶ受けやすくなる。



 埼玉に戻って、11日の開智(先端特待)も▲20%台半ばで予想倍率は2倍台半ば、12日の大宮開成(特待)はほぼ3分の2で同2倍ほどに、14日の開智(2回)は▲30%で同1倍台半ばといった具合に、どこもかなり受けやすくなっている。



 志願者合計数が100人に満たない入試の中には、予想倍率が1倍割れも散見される。ざっと挙げておくと、いずれも10日の狭山市にある西武文理(1回)、春日部市の春日部共栄(1回午前)、埼玉栄(1進学)、1倍ちょうどの予想が浦和実業(1回AM特待)といった具合で、気になるようなら受けてみる価値はありそうだ。



 千葉では、20日午後の渋谷教育学園幕張と隣接する昭和学院秀英(午後特別)が前年比ほぼ3分の2で倍率予想は5倍台半ばに緩和、25日の麗澤(2回)は▲20%弱、26日の専修大学松戸(2回)も▲20%弱で予想倍率3倍台半ばとなっている。



 千葉でも志願者数合計が100人に満たない入試にも触れておきたい。前年比ほぼ3分の2となるのが、20日の東海大学付属浦安(A)と日出学園(I期)で、東海大浦安は1倍割れ予想となっている。



 25日の市川市にある昭和学院(アドバンストチャレンジ)は▲10%、成田高校付属(一般)は▲20%台半ばで、いずれも予想倍率は1倍台半ばとなっている。



>>後編(2月入試)に続く



【訂正】記事初出時より以下の点を訂正いたしました。
・3ページ目4行目:埼玉栄(さいたま市西区)→栄東(さいたま市見沼区)
(2020年12月1日13:45 ダイヤモンド社教育情報)

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