いよいよ来週2月1日から東京と神奈川で入試が始まる。首都圏での一般入試開始直前に緊急事態宣言が再度発令されたことにより、出願状況には例年とはだいぶ変化が見られ、その動向が読みづらい。
出願者数を増やした駒場東邦
例年ならば、11月に実施された大手四模試の志願者状況を見ることで実倍率の増減を読むことができた。ところが、2021年入試では12月段階でも少し動きがあり、緊急事態宣言の再発令後からもさらに動きがあったこともあり、その動向を的確に読むことがいささか難しい。
それでも、先行した埼玉と千葉の出願状況から、難関校へのチャレンジ受験減と後半の入試日の出願数減、渋谷教育学園幕張の例年より少し易化した入試での得点減という学力不足の問題といった傾向がうかがえた。感染リスクの回避に加えて、確実に合格を狙う安全志向という昨今の大学入試でも見られた傾向が中学入試にも色濃く反映するようになった点が感慨深い。これは受験生1人あたり出願校数の減少につながる動きでもある。
今回は、前後編に分けて、東京と神奈川の各校1回目の入試を中心に見ていきたい。多くの学校は2月1日午前に実施されるが、1日午後や2日、3日という学校もわずかにある。四谷大塚第6回合不合判定80偏差値に基づき、各入試を5刻みでランク分けし、最難関のAランク(偏差値65~)からGランク(同~44)までその動向を記した。
まずは男子受験生の難関校がそろう偏差値60台のA・Bランクから見ていこう。ここでいう実倍率とは2020年の実績値であり、予想倍率とは12月模試の志願者数の増減が1割以上だった入試に対してつけた数値である。
前回までの連載記事でもお伝えしてきたが、難関校では総じて志願者が1割ほど減少する傾向が見られる。
御三家と並ぶ駒場東邦では、出願締め切り1週間前の段階ですでに前年実績を超え、まだまだ積み増している。麻布とどちらを受けるか検討する傾向も強く、麻布から志願者が流れた様子が見てとれる。ここ数年は実倍率2.0倍と受けやすく、東京大合格実績もアピールした結果とみられる。予想倍率は2.2倍だが、それを上回るかもしれない。共学校では渋谷教育学園渋谷(渋渋)の出願者動向が前年を上回る勢いにあり、2020年の実倍率3.0倍よりも厳しくなりそうだ。
実倍率3倍がメルクマールに
男子のBランク(偏差値64~60)では、海城が微増の動きとなっている。Aランクの受験を諦めた層の受け皿となっているのかもしれない。神奈川のサレジオ学院はすでに前年実績を確保し400人を突破、1割以上は出願者を増やす勢いである。実倍率2.0倍に対して、予想倍率は2.3倍となっている。
早稲田は3.3倍という高い実倍率が敬遠されたようで、模試の志願者動向では2割以上の大幅減を示していたものの、現状では1割減程度で収まった。早稲田高等学院の実倍率は数年前まで2倍少しだったものが、2020年は3.1倍と高かった。
このように、3倍という実倍率は志願者の増減を左右する一つの指標となる。受験生からすれば、周りの賢そうなライバルを見渡して、3人に1人では合格する実感を持ちづらい。そういう入試はどうしても敬遠気味になる。
2021年は難度が上がり過ぎた午後入試の大幅出願減が見込まれている。その象徴となるのが算数1科で行われて人気となった1日午後の巣鴨と世田谷学園で、出願者はいずれも現時点で2割前後の減少が見込まれる。特に、実倍率2.0倍だった世田谷学園のこの入試は、予想倍率が1.3倍と緩和し、1日午後最大の穴場といっていい受けやすさになりそうだ。ちなみに、巣鴨は3.0倍が予想2.6倍、鎌倉学園は2.4倍が予想1.5倍となっている。
1日午後が1回目の入試となる東京農業大学第一は、実倍率2.2倍が好感されたのか、早々に前年実績を超え、大幅に出願者を増やしている。
2月2日には神奈川のAランク3校が並ぶ。聖光学院は出願締め切りに向け積み増していくので確定的なことはいえないが、予想では1割弱の減少、出願動向からは1割強の減少と見込まれる。出願を締め切った栄光学園は、3日入試の浅野と共に前年比2%減にとどめた。慶應義塾湘南藤沢は締め切ったものの、出願者数は非公表である。
実倍率2.3倍の明治大学付属明治は、予想では2.0倍だったが、最新動向では微増の勢いに転じている。2日には城北、攻玉社、世田谷学園の2回目入試が並んでいる。いずれも実倍率が2.0倍、2.1倍、2.3倍と低く、2021年も出願増の気配はないため、最難関校の併願先として狙い目である。
出願者数を増やした桜蔭とフェリス
ここからは女子受験生の難関校を見ていこう。いずれも出願を締め切っているが、東京女子御三家は女子学院9%減、雙葉8%減に対して桜蔭は5%増となった。実倍率がそれぞれ2.7倍、3.7倍、1.8倍と桜蔭が頭一つ低かったことも背景にはありそうだ。
人気の洗足学園は、実倍率3.7倍を敬遠されたのか、現状では1割強の減少傾向である。それでも3倍以上は維持しそうで、神奈川一の人気女子校の地位は揺るがない。
女子人気が強い東京の共学校では、渋渋が前年比微増の勢いで、実倍率3.0倍を確保しそうである。実倍率5.4倍だった広尾学園(本科1回)も微増傾向で推移しており、2021年開校の姉妹校である広尾学園小石川との併願機会も増えて、広尾学園にどうしてもという需要に応えている。3日の慶應義塾中等部は実倍率6.1倍と高かったが、青山学院が2日に戻ったこともあってか、予想倍率6.9倍とさらに厳しい競い合いとなりそうだ。
女子校では鷗友学園女子が絶好調で、締め切り10日前に前年比1割増であり、どこまで上積みするのか注目される。実倍率2.0倍に対して予想倍率は2.5倍となっている。5日の入試をやめ1日と2日の2回に変更した吉祥女子は、第一志望の受験生を取りたいところだが、募集人員を20人増やした1日の出願状況は微増傾向で進んでいる。
頌栄女子学院は1日こそ微減傾向だが、吉祥女子が抜けた5日の2回は現状では大幅増の勢いで、話題の入試となりそうだ。
1日午後に1回目を実施する神奈川大学附属は、実倍率男子1.9倍、女子2.2倍と低めでありながら、男女共に2割ほど減少気味だ。しかし、2日の2回はそれを補って余りある勢いで出願者を集めており、締め切り2週間前には前年実績を確保したほどである。
2日には、前年並みを維持しそうな豊島岡女子学園、慶應義塾湘南藤沢、昨年の3日から戻った青山学院がAランクに並んでいる。実倍率5.4倍が上振れしそうな勢いで、青山学院への女子の気持ちは揺らがない。Bランクでは白百合学園が1割ほど減らしそうで、実倍率2.8倍が予想倍率は2.5倍となっている。明治大学付属明治は実倍率3.5倍だったものの、弱含みである。
後編では、東京と神奈川の上位校と中堅・中位校について見ていこう。