国内製薬最大手である武田薬品工業の国内事業部門責任者が交代することが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。残り少ない生え抜き日本人幹部が近く退任し、次期社長候補の一人となる外部出身の元金融マンにバトンタッチする。

(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

経営中枢で姿消す「生え抜き」
国内事業部門トップが退任へ

 国内製薬最大手である武田薬品工業の国内事業部門「ジャパンファーマビジネスユニット(JPBU)」のトップが交代することが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。

 現職の同部門責任者である岩崎真人プレジデント(62歳)が近く退任する。後任は外部出身の元金融マンが務める。

 武田薬品はフランス人のクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者、54歳)の下、ここ数年の間に巨額の企業買収や国内研究所の縮小などを断行してきた。

 世界的なメガファーマ(巨大製薬会社)へと姿を変える中で、経営中枢の顔触れも様変わり。外国人中心となり、生え抜きはどんどん姿を消した。

 経営中枢では、岩崎氏は数少ない武田薬品の生え抜き社員だった。

 岩崎氏は1985年入社。製品戦略部長、医薬営業本部長などを経て、15年からJPBUプレジデントを務めていた。JPBUは世界に四つあるグローバル事業拠点の一つで、傘下に国内営業部隊の医薬情報担当者(MR)を抱える組織。昨年には希望退職者の募集(社内におけるプログラム名は「フューチャー・キャリア・プログラム」)を実施するなどして、体制改革を行った。

 岩崎氏は武田薬品の経営中枢を意味する「タケダ・エグゼクティブチーム」の一員でもある。

同チーム18人のうち、日本人は現在わずか4人。そのうち武田薬品の生え抜き社員は岩崎氏と、グローバル ジェネラル カウンセルの中川仁敬氏のみだ。

後任の元金融マンは
次期CEO有力候補

 複数の武田薬品関係者によると、新たにJPBUプレジデントに就任する外部出身の元金融マンは、「この数年間で劇的な変化を遂げた武田薬品らしい人物であり、優秀で、ウェバー社長兼CEOの覚えがめでたい」(武田薬品幹部)。重要ポストを後継することは、「ポスト・ウェバー社長兼CEO」争いの有力候補に躍り出たことを意味する。

 武田薬品の2021年3月期連結売上高予想は3兆2000億円。「30年度までに売上高5兆円」という大きな目標を掲げる同社は、大規模な構造改革を継続して行っている。国内において長年「武田薬品の顔」となり、アリナミンシリーズなどを販売する大衆薬(OTC医薬品)子会社も、20年に米投資ファンドへの売却が決定した。

 老舗日本企業から世界で戦うメガファーマへと激変する中で、今回の岩崎氏の退任は社内ブレーン入れ替えが最終形態に近づいたことを物語っている。

 なお、ダイヤモンド・オンラインでは、国内事業トップに就任する元金融マンの人物情報などを『武田薬品の国内責任者に「次期社長候補・元金融マン」、生え抜き去る【スクープ完全版】』で詳報している。

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