ワーストランキングを作成
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し、4年ぶりに規制のない海水浴シーズンが到来。以前のような夏のにぎわいが戻ってきた。
環境省は毎年、全国の海水浴場(一部、湖沼や河川の水浴場も含む。以下、海水浴場と表記する)の水質調査を取りまとめてきた(2020年、21年はコロナ禍で水質調査結果の取り扱いが異なることなどを理由に中止)。そこでダイヤモンド編集部では、同データを基に「水が汚い海水浴場ランキング」を作成した。
対象となったのは、水質格付けが低い「B」「A」の海水浴場で計333カ所。
水質の判定基準は四つある。水の汚れを示す化学的酸素要求量(COD)、ふん便性大腸菌群数、透明度、油膜の有無で、それぞれ、適(AA、A)、可(B、C)、不適の5種類で格付けされている。
4つのうち1つでもAの基準をクリアできなければ、その海水浴場は、他の判定基準がどれだけ良くてもB以下に落とされる。仮にCODが同じ値でも、AとBでは水質が異なるわけだ。
そこでダイヤモンド編集部の水が汚い海水浴場ランキングは、水質Bの162カ所をCODの多い順に並べ、163位以下は水質Aの171カ所をCODの多さで同様に並べて作成している。なお、ランキング中のCODは複数回測定の平均値である。
少し専門的な話になってしまうが、CODについても説明したい。CODは、海水に含まれる有機物を酸化剤で酸化するときに、消費される酸化剤の量を酸素の量に換算したものだ。
CODが高いほど、水中に存在する有機物の量が多いことを意味し、有機物による水質汚濁の程度が大きいことになるのである。
前述の通り、ランキングの中には一部、川、湖沼の水浴場も含まれているので、海のない自治体に住む人もぜひチェックしてみてほしい。
さっそく、ランキング結果を見ていこう。
1位となったのは「世界遺産の島」のビーチ
ワースト1位となったのは広島県廿日市市の包ヶ浦自然公園の海水浴場で、CODは4.8 mg/リットルだった。
「世界遺産の島」である宮島の東にあるビーチで、公園内にはキャンプ場や宿泊施設などもある。2022年に行った同様のランキングでは、CODが3.0mg/リットルで37位だったが、今回は大きく順位を上げる結果となった。
2位と3位は青森県東北町のわかさぎ公園(CODは4.7mg/リットル)と小川原湖公園(CODは4.6mg/リットル)となった。これらは小川原湖の湖畔にある水浴場だ。
小川原湖は全国の湖で11番目に面積が広い、海水と淡水が入り交じる汽水湖である。湖なので、海に比べて水がたまることも影響していそうだ。
小川原湖公園のほか、3位にランクインしたのは宮城県亘理町の荒浜(亘理)と千葉県千葉市のいなげの浜。
荒浜海水浴場は11年の東日本大震災で被災し、22年に12年ぶりの再開となったが、コロナの影響もあり、人出は震災前の約2割だったもよう。
いなげの浜は、東京湾沿岸に位置する長さ約3キロ、面積約83ヘクタールの総合公園・稲毛海浜公園にある日本初の人工海浜。19年のリニューアルの際には、オーストラリアの白い砂が搬入され話題になった。22年版ランキングでは10位(CODは3.8mg/リットル)だったが、大きく順位が上がった。
兵庫県や広島県のアクセス良いビーチも上位
6位は北海道苫前町のとままえ夕陽ヶ丘ホワイトビーチと山口県岩国市の潮風公園で、CODは4.3mg/リットルだった。
とままえ夕陽ヶ丘ホワイトビーチは約1000平方メートルにわたり白い砂が敷き詰められた海水浴場で、オートキャンプ場や温泉宿泊施設なども隣接している。また、潮風公園のビーチは約450メートルの人工海浜で、1.2キロの遊歩道、レストランや物販施設、ミクロ生物館などもある。
8位は兵庫県神戸市の須磨で、CODは4.2mg/リットルだった。JR須磨駅からすぐとアクセスが良く、約1800メートルにおよぶ砂浜には、毎年多くの海水浴客が訪れる人気のビーチだ。
9位は広島県安芸郡坂町のベイサイドビーチ坂で、CODは4.1mg/リットルだった。広島市内から車で約30分と比較的アクセスの良い、約1200メートルの人工海浜だ。
また、10位には宮城県気仙沼市の小泉、神奈川県横浜市の海の公園、高知県高知市の種崎の3カ所がランクインした。
4年ぶりの行動制限のない夏休み、海水浴場に多くの人が訪れる中、感染対策に十分気を付けて、楽しんでいただきたい。
(ダイヤモンド編集部 松本裕樹、清水理裕)