『週刊ダイヤモンド』7月6日号の第1特集は「16業界300社 5年後の業界地図」です。昨年来の大幅な円安や金利上昇、生成AIのさらなる進化など、新潮流が産業界にいかなるインパクトを与えるのか、気になる人も多いのではないでしょうか。
産業界に新潮流が台頭
インフレ、金利上昇、円安――。これらはいずれも、過去「5年」の間に生じた新トレンドだ。
というのも、景気は通常、5年程度で1サイクルを描くとされる。投資においても、中長期の目線でリターンを狙う場合、この時間軸が一つの目安になる。
振り返れば、5年前の2019年。代表的な株価指数の日経平均株価は2万円台前半でもみ合い、膠着感にさいなまれていた。
だが、20年にコロナ禍へ突入後は、主要国による異次元の金融緩和などを受け、大きく水準を切り上げたことが記憶に新しい。
その後、非課税枠が大幅に拡充された「新NISA」の元年でもある24年。海外投資家のマネーを呼び込みながら、2月に従来の史上最高値を更新すると、3月には初めて「4万円」の大台を記録するに至った。
外国為替市場では19年夏ごろ、円の対ドル相場が100円台後半にすぎなかった。
では、今から5年後の20年代末、日本はどんな姿をたどるのか。
市場関係者が描く未来シナリオを基に、日本株や為替、注目企業の株価や業績、株高に期待できる銘柄の数々を、一挙に炙り出そうというのが本特集である。
その端緒とすべく、純利益の市場予想データを基に、注目15業種の主要企業の業績をビジュアル解剖したのが下図だ。
というのも、純利益はEPS(1株当たり利益)やPER(株価収益率)の計算の基にもなり、投資家目線で重要度が高い。新NISAでは高配当銘柄が人気だが、配当の原資となる存在でもある。
何しろ、「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」企業にメスを入れた東証市場改革や、従前からのコーポレートガバナンス(企業統治)改革も後押しする形で、配当や自社株買いなどの株主還元に力を入れる企業が増加中だ。
好業績で配当額が増勢をたどるほか、自社株買いを積極化させるトレンドも続いており、大和証券の阿部健児チーフストラテジストは、「当期利益に占める自社株買いの比率は、24年度に大きく上昇すると予想している」と話す。