最新のEUV(極端紫外線)露光装置が故障した──。2月下旬、米カリフォルニア州で開催された国際光工学会。
次世代の半導体製造技術の動向に注目する参加者の間で“隠れた大ニュース”になったのは、半導体製造大手、台湾TSMCの幹部の言葉だった。

 半導体の微細化が限界に近づく中、EUVは次世代技術の本命とされてきた。半導体露光装置で世界シェア約8割のオランダASMLが巨費を投じて実用化に邁進。キヤノンとニコンはすでに開発を断念しており、EUVが主流になれば、ASMLは最新の露光装置の需要を“総取り”できる。

 トラブルを起こしたASMLのEUV露光装置は、初の量産機としてTSMCに納入されたもの。だが、試作中にトラブルが起き、レーザーの照射位置がずれて装置の内部を損傷させたという。

 「EUV露光装置の故障」というニュースに、半導体製造装置業界はざわめき始めている。

キヤノンが大勝負

 EUVの“手詰まり感”が漂う中、反転を懸けて勝負に出たのがキヤノンだ。「ナノインプリント」という新技術で高いノウハウを持つ米モレキュラーインプリント(MII)を4月に買収すると発表。買収額は非公表だが100億円以上とみられ、シェア約5%からの再浮上を目指す。

 ナノインプリントは、光で半導体の回路を描写する露光装置とは異なり、型をウエハー上の樹脂に押し当てて回路を形成する。超微細な“はんこ”をイメージすればわかりやすいだろう。

レンズや光源など高額な部品が不要なため露光装置よりも安く、解像度が高いメリットがある。一方、多数のウエハーを処理すると気泡やゴミが混入するなどの問題があり、量産には向かないとされてきた。

 しかし、2009年からMIIと共同研究してきた結果、これらの課題に解決の道筋がつき、今回の買収に至った。処理能力は現行のASMLの数分の1程度だが、生駒俊明副社長兼最高技術責任者は「装置も安く小さいので、複数台並べて使えばトータルコストは安くなる」と自信を見せる。

 試作機は提携する東芝の四日市工場(三重県)に納入したとみられ、装置の販売は15年に開始する見込み。2、3年後には年間販売台数200台以上、売上高2000億円を目指しており、生駒副社長は「勝算は五分五分以上。キヤノンの柱の一つとなる重要な事業にしたい」と意気込む。

 一方、半導体製造装置の世界シェア約15%で2位のニコンは、ASMLに差をつけられていた処理能力で、ASMLと同等の能力を持つ新型装置の受注を4月から開始。ASMLよりも精度が高く、より微細な加工に向いていることをアピールし、シェア回復を狙う。

 微細化が限界に近づきつつあるとはいえ、競合の半歩先を行けば1000億円単位の利益を生む可能性を秘めているのが半導体ビジネス。次世代の本命であるEUVが足踏みする中、一足先に装置の性能が認められれば、製造装置メーカーは巨額の設備投資の恩恵を享受できる。

 ASMLの後塵を拝してきた日本勢は、はたして存在感を発揮できるか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)

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