ビジネスパーソンに1日の業務の流れを聞いてみると、出勤してまず最初にすることは「メールチェック」と答える人が多いだろう。さらに聞いてみると、メールチェックにはそれなりに時間がかかり、30分から1時間ほど、ときには午前中の多くの時間をメールチェックに費やすという人もいる。

 現代の仕事にメールのやり取りはつきものだ。だからこそ、いかにメールをうまくさばけるかは重要な「仕事のスキル」となりえる。現代人はメールを送るとき、受け取るときに、どんなことを感じているのだろうか。

メールチェック、98%が1日1回以上
でも約7割が自分のメールに「不安」

 一般社団法人日本ビジネスメール協会(東京都千代田区)が行った「ビジネスメール実態調査2014」によると、仕事上で社内外とコミュニケーションをとる主な手段は「メール」(98.45%)が最も多く、「電話」(91.98%)を上回っている。また、「LINE」(12.03%)やFacebookの利用も上昇中で、ビジネスシーンでも無視できないコミュニケーション手段になりつつあるという。

 ビジネスメールの確認頻度は、平均で「1日に10回以上」(42.33%)と答えた人が最も多く、98.04%の人が「1日に1回以上」はメールを確認すると答えた。確かに、ビジネスにおけるメールの場合、1日以上返信が遅れると「返信が遅くなり申し訳ありません」といった一言がつけられることが多い。最近はiPhoneで仕事のメールを確認するなど、出先でもメールチェックをしやすいことから、メール返信に求められるスピードはどんどん速くなっているとも言える。

 それでは、それほど頻繁に行われるメールのやり取りについて、ビジネスパーソンたちはどのように感じているのだろう。調査によると、メールを書くときに不安を感じることが「よくある」人は13.99%、「たまにある」人は53.02%で、約7割の人が自分のメールに対して不安を感じているという。

 逆に、ビジネスメールを受け取って不快に感じることが「よくある」人は4.22%、「たまにある」人は46.34%。約半数の人が何らかの不快を感じたことがあるようだ。

 不快に感じた内容のトップ5は、「文章が曖昧」(37.69%)、「文章が失礼」(31.85%)、「文章が攻撃的」(21.84%)、「文章が冷たい」(17.94%)、「件名(タイトル)が分かりにくい」(17.39%)だった。

文章が曖昧……
分かりにくいメールが嫌われる理由

 最も多かったのは「文章が曖昧」というもの。何について返答すれば良いのかが一読してわかりづらかったり、どちらの確認待ち状態なのかがよくわからないメールというのは、経験したことがある人も多いだろう。「同じ人に送るメールでも、何の件によるかでメールを分けて送る」ことを推奨するメール術もあるが、これもメールの内容をわかりづらくせず、後から確認する際にスムーズにするための配慮だ。メールの文章が曖昧になってしまうことが多いという人は、「何について確認するためのメールなのか」「無駄に長文になっていないか」について送信前に今一度確認するといいかもしれない。

「件名(タイトル)が分かりにくい」についても同様のことが言える。また、最近ではビジネスメールに見せかけた迷惑メールも多いため、「【重要】」「至急ご確認をお願いします」「仕事の件」など、具体性に乏しく、誤認されそうなフレーズだけでメールを送るのは場合によっては避けた方がいいだろう。

 不快メールの2位~4位は、「文章が失礼」、「文章が攻撃的」、「文章が冷たい」など。本人が何らかの理由があって自覚的に行っている場合はさておき(もちろんそれはそれで困った問題だが)、全くそういった意図がないのに「失礼」「攻撃的」「冷たい」と思われてしまっている場合は要注意だ。

「会うと穏やかな人なのに、メールの文章がきつい」という人は確かに存在する。用件だけのメールや、あまりに形式ばったメール派、ときとして冷たい印象を与えがちだ。たまに社内で、「自分のメールはどんな印象か」について、年代や性別に分けて聞いてみるといいかもしれない。

 とはいえ、メールの内容には「社風」も反映されるもの。筆者自身の体験だが、以前男性の多い企業の男性担当者とメールのやり取りを始めたとき、相手のメールが宛先や挨拶文などが全くなく、「わかりました」「確認します」など一言だけだったため、「何か怒らせてしまったのだろうか……」と思ったことがあった。しばらくして、どうやら怒っているわけではなく、形式にこだわらずにメールを送るざっくばらんとした社風なのだと気づいた。メールの内容や雰囲気は担当者個人レベルの話でもあるが、その企業の社風も表れる。送る側はなるべく注意を払いたいものだが、受け取る側は「??」と感じても、ある程度は「自分の思い違い」「社風の違い」と思っていた方が煩わされずにすみそうだ。

「文章が失礼」に関しては、一つ聞いた話がある。ある中小企業で、入ってきたばかりの新入社員に対して、上司が社内メールを送る際に「宛先(○○さん)」や「挨拶(お疲れ様です、××です)」などを抜かして、気楽にメールを送っていたという。もちろん上司は「上司から部下に送るメールだから簡略化している」という意識だったそうだが、そのメールを受け取った新人は、自分が上司や社外のクライアントに送るメールでも宛先や挨拶を抜かしたメールを送るようになってしまった。「ビジネスメールの送り方」について指導したところ、その新人から「それではなぜ、××さん(上司)は私に、ちゃんとしたビジネスメールを送らないのですか?」と言い返されてしまったそうだ。

 メールのやり取りが多い現代。絵文字や「!」はご法度と言われるビジネスメールだが、相手によっては和ませるためにあえて絵文字や記号、くだけた会話文を使うという人もいるだろう。「形式なんて効率が悪くくだらない」という人もいる。

ただ、どんなメールを失礼、不愉快だと感じるかは人によって違う。クライアントに対して、自分流のメールを押し通せる場合ばかりではない。その多様性を知るために「ビジネスメールの基本」を学ぶことが必要だろう。要は、メールの送り方の引き出しを増やすのが重要だ。

(小川たまか プレスラボ)

出典:一般社団法人日本ビジネスメール協会「ビジネスメール実態調査2014」
調査時期 6月3日~7月2日
調査方法 パソコンサイト上のアンケートフォームによる選択回答式
調査実施機関 アイ・コミュニケーション
有効回答数 1422

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