「最近5年間に泊まったホテルの中でのベストホテル」「いつか泊まりたいホテル」の2つのアンケート調査項目(宿泊者3466人が回答)によるランキングで、共に1位に輝いた「帝国ホテル 東京」の総支配人にインタビューして、自己評価を聞いた(アンケート方法については文章末をご参照ください)。

現場発案のサービス向上を
重視している

 東京には今なお新しいホテルが続々と建てられています。

当然ながら新しい方が設備はいい。われわれはそれらに負けないように、定期的に施設をメンテナンスしながら、スタッフが各現場で日々サービス向上に努めています。

 その結果が今回のアンケート調査の評価につながったのだろうと思います。

 10年ほど前から、お客さまから名前を挙げて褒めてもらったスタッフなどを「さすが帝国ホテル個人表彰」として毎月5人ほど選び、その中から年間大賞を1人決めています。

 ルームサービス担当者が表彰されたケースでは、客室に食事を届け、セッティングを終えて退出した後、閉まったドアに向かって一礼した様子を、たまたまお客さまがドアスコープ(のぞき窓)から見ていて、お手紙で褒めてくださりました。

 そのエピソードをあるメディアで紹介したところ、それを読んだ方が本当かどうか確かめるために泊まりに来られました。そういう点では、常に気が抜けません。

 タクシーで来館するお客さまのために、ドアマンが両替用の千円札を常にポケットに用意しているのも、先のルームサービスの一例も全て現場のアイデアをみんなが実行するようになったものです。

 こうした現場にこそ帝国ホテルの強さがあると私は思っています。

 客室数が900を超え、13のレストランを持つ大きなホテルではありますが、100室くらいのスモールラグジュアリーホテルに滞在しているような雰囲気で、お客さまをもてなすように心掛けています。

 とはいえ、契約社員などを含めて約1800人のスタッフ全員に徹底できているかといえば、まだ不十分な面もあります。

 お客さまから年間1500通のコメントレターが届きますが、どんなに忙しくても全部目を通し、私のコメントを書き添えて担当部署に回しています。

 本館14~16階の「インペリアルフロア」では、女性スタッフが着物姿でお客さまをお迎えします。

 創業120周年を迎えた2010年に本館を大規模改修しましたが、今はタワー館で改修を進めています。この3月に改修が終わった30~31階では、本館インペリアルフロアと同じように着物姿でのお迎えを始めます。

 タワー館の改修では居住性や快適性の向上に加えて、銀座の街全体を眼下に見渡せる眺望の良さを存分に楽しんでもらうための空間づくりにも力を入れています。

 宿泊部門の売り上げの4割は「インペリアルクラブ」などのホテル会員の利用によるものです。「部屋に加湿器を置いてほしい」「毛布を1枚追加してほしい」といったご要望やお客さまの好みは、データベースで管理し、次回の宿泊時にはあらかじめ用意しています。

 朝のメインダイニング「レ・セゾン」や昼間の「オールド・インペリアル・バー」はすいていて、ゆっくりできますし、スタッフとの会話も楽しめます。こうした穴場の時間帯にも利用してみてください(談)。

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