今後、株式市場における極端な集中が緩和した場合、技量があるアクティブ・マネージャーが指数を上回るリターンを獲得する機会が増えると考えます。


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市場のブレスが非常に狭く(一部の限られた銘柄が株式市場の上昇を牽引する)、ボラティリティ(変動性)が相対的に低い相場を経て、投資家は、ポートフォリオのエクスポージャーとアクティブ・リスク*を見直していることでしょう。
直近数年間、アクティブ・シェア**が高い多くのグローバル株式戦略がアンダーパフォームしたため、多くの投資家が既にアクティブ・リスクを削減したほか、そうすることを検討しています。しかし、足元、市場のブレスは拡大傾向にあります(広範な銘柄に上昇が波及し始めている)。このことは、アクティブ運用が復権し、高いアクティブ・リスクを選好する投資家にとってより明るい期間が到来する可能性を示唆しています。

*アクティブ・リスク(トラッキング・エラーも同義語として使用されます):戦略とベンチマークのリターンの乖離の大きさを示す指標で、アクティブ・リスクが高いほど戦略とベンチマークのリターンの乖離が大きく、アクティブ・マネージャーが独自の投資意思決定を行っていることを意味します。

**アクティブ・シェア:戦略とベンチマークにおける保有がどれだけ乖離しているかを示す指標です。アクティブ・シェアが100%に近づくほど戦略の保有とベンチマークの構成の乖離が大きく、アクティブ・シェアが0%に近づくほど戦略の保有とベンチマークの構成の類似性が高まります。

歴史的に、グローバル株式は、平均して、アクティブ・マネージャーがアクティブ・リスクを取ることによってより高いリターンを獲得することができた資産クラスです。2025年3月末までの10年、15年、20年の期間でみると、グローバル大型株式戦略のアクティブ・マネージャーは0.5%~1.0%の超過収益を獲得しています(中央値ベース)。なお、同期間中、上位4分の1のアクティブ・マネージャーは概ね1.5~2.0%、上位5%のマネージャーは3~4%の超過収益を獲得しています(平均値ベース)。このデータは、長期的な観点で、技量があるアクティブ・マネージャーは年率2~4%程度の超過収益を提供してきたことを示唆しています。そして、この結果は、「超過収益を持続的に獲得するためには、どの程度のアクティブ・リスクをとるのが適切なのか」という疑問につながります。


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過去10年間のデータを見ると、トラッキング・エラーが6%を超える戦略は、平均して、投資家にリスクに見合ったリターンを提供していないことがわかります(図1)。
超過収益の平均が相対的に低いだけでなく、ヒット・レシオ(ベンチマークを上回った戦略の割合と定義)も50%を下回っており、10年間の超過収益がプラスとなったアクティブ・マネージャーは半数以下でした。当該期間、10%以上の超過収益を獲得し大成功を収めたマネージャーが存在したことも確かですが、超過収益の乖離幅は大きく、平均すると多くのアクティブ・マネージャーが成果をあげることができませんでした。興味深いことに、サンプル数は少ないものの、トラッキング・エラーを抑え、厳格にリスク管理を実施したアクティブ・マネージャーは、より魅力的なリスク調整後リターンを提供していた傾向がありました。合理的な投資家のほとんどは、ヒット・レシオが50%を下回る戦略群に資産を配分することは少ないと考えられます。ただし、直近10年間の結果から結論を導くには注意が必要です。

グローバル株式アクティブ・マネージャーにとって、過去5年間は非常に不利な市場環境だったと考えます。当該期間、グローバル大型株式戦略のアクティブ・マネージャーの超過収益の中央値は長期平均を下回りました。さらには、最新時点において、5年ローリングの超過収益の中央値はマイナスとなり、これは過去20年間で初めてのことでした。


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このようなデータから「市場は効率性を増し、アクティブ運用の魅力が減少している」ことが連想されます。しかし、インターナショナル株式(グローバル株式除く米国株式)を対象とした同様のデータは、グローバル株式アクティブ・マネージャーの低調は、米国株式市場のブレスが極端に縮小したことによる影響であることを示唆しています。足元、米国株式以外で大型株式戦略を運用するアクティブ・マネージャーの超過収益は20年平均を大きく上回っており、2008~2009年に発生した世界金融危機の影響を含む期間以降、マイナスになったことはありません(図3、中央値ベース)。これは、米国以外の株式市場においては、アクティブ・マネージャーが市場のブレスの広さから恩恵を受けていることを示唆しています。
一方、米国大型株式戦略については、アクティブ・マネージャーがプラスの超過収益を獲得することが長らく困難な状態が続いており、アクティブ・マネージャーが過去10年間で年率1%を超えるアンダーパフォームを経験してることを示唆しています(図4、中央値ベース)。


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S&P500種株価指数における集中度が極端に高まり(図5)、一部の限られた銘柄が米国株式市場を牽引する市場環境は、過去数年間、アクティブ・マネージャーにとって非常に困難なものでした。一部の大型株式が市場を牽引したため、銘柄選択を実施し、アクティブ・リスクをとっても報われることは稀でした。MSCIオール・カントリー・ワールド指数における「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる米国大型ハイテク銘柄群の構成比率は、米国に次いで構成比率が高い8か国の株式群の合計構成比率とほぼ同水準となりました(図6)。そのため、アクティブ・マネージャーが「マグニフィセント・セブン」にエクスポージャーを持たなかった場合、困難に直面しました。同時に、株式市場における極端な集中度の高まりは、分散投資が十分に機能しないリスクをパッシブ投資家にもたらします。2025年初頭にみられたように、株式市場の集中度の高まりが解消し始めた場合に、このようなリスクは高まります。


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5年ローリングのリターンを用いた場合、期間により程度のばらつきはあるものの、グローバル株式のアクティブ・マネージャーは長期的に約1%の超過収益を獲得しており、構造的にアクティブ運用が有効であったことを示唆しています(図2)。市場のブレスを示す指標をみると、過去5年間は、アクティブ・マネージャーにとって特に厳しい市場環境であったことがわかります。実際、過去5年間のうち4年間で、MSCIワールド指数をアウトパフォームした銘柄の割合は過去20年間の最低水準付近にありました(図7)。なお、2022年は例外であり、この年は経済成長の鈍化やインフレ圧力の高まり、金融引き締め等の要因により、エネルギー・セクターを除くほぼ全ての市場で売りが優勢となり、セクター、スタイル、ファクターの大幅なローテーションが見られました。MSCIワールド指数をアウトパフォームした銘柄の割合が低かったことを踏まえると、近年、アクティブ・マネージャーが超過収益を獲得するのが困難であったことは不思議ではないでしょう。



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直近5年間、アクティブ・リスクが相対的に高いマネージャーのヒット・レシオは概して低く、そのリスクを取る対価も乏しい期間となりました(図8a)。しかし、それ以前の期間を見ると、ヒット・レシオは総じて高く、アクティブ・リスクをとることで良好なリターンを獲得できていたことがわかります(図8b)。当該期間、市場のボラティリティは全般的に低い傾向がありましたが、市場のブレスは拡大していました。結果的に、銘柄選択に適した市場環境となり、アクティブ・マネージャーが超過収益を獲得する機会が生じたと考えます。


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1999年にリチャード・グリノルドとロナルド・カーンにより発表された「アクティブ・ポートフォリオ・マネジメント」は、最適なアクティブ・リターンは「スキル」と「市場ブレス」という2つの要素によって構成されると提唱しています。これは、アクティブ・マネージャーがプラスの超過収益を獲得する能力は、いかに優れた予測を行い、どれだけ多くの独立した投資意思決定を行うかにかかってることを意味しています。スキルと運を適切に区別するためには、多様な市場環境を含む長期間において、一貫して超過収益を獲得することができたかを評価することが重要です。また、市場ブレスを考慮することも重要です。一部の限られた大型株式が高い構成比率を占める指数に関しては、アクティブ・マネージャーの銘柄選択が奏功した場合でも、それら大型株式へのエクスポージャーを限定していた場合、銘柄選択の価値を評価することは難しくなるでしょう。

足元、米国以外の株式市場に対する期待感が高っていることや、米国株式市場の上昇を牽引する銘柄数も増加傾向にあることを踏まえると、アクティブ・マネージャーにとってのチャンスが拡大していると考えます。テクニカル指標は市場ブレスが拡大傾向にあることを示唆しています。ブレスが拡大する局面では、技量があるアクティブ・マネージャーはアクティブ・リスクをとることによりリターンを獲得でき、ヒット・レシオも改善する可能性があります。
また、低リターン環境においては、超過収益を獲得する価値も相対的に高まります。パッシブ投資の普及により、運用報酬に見合った超過収益を獲得するよう、アクティブ投資に対して風当たりが強まっていますが、今こそ、アクティブ・マネージャーは運用報酬を払う価値を投資家に再認識させる時だと考えます。


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