【ポイント】
・名古屋大学で高品質結晶成長技術と伝導性制御技術を確立した青色LEDがIEEE Milestoneに認定された
・青色LEDは、高効率な白色光源による省エネルギーの実現、環境負荷の低減に貢献するなどイノベーションをもたらした発明
【研究背景と内容】
赤色と緑色のLEDは1960年代に実用化されていたが、青色LEDの実現には大きな技術的障壁があった。青色光を発するには約2.6eVの広いバンドギャップを持つ半導体が必要で、従来の材料(SiやGaAs)では不可能だったのである。候補として挙がった窒化ガリウム(GaN)は、基板との格子不整合や結晶成長の困難さから、1980年頃には多くの研究者は開発を諦めていた。
赤﨑勇教授と天野浩教授による研究は、GaNによる結晶成長を行い、以下の3つの技術的課題を克服した。
1. 高品質GaN結晶の成長
サファイア基板上にAlN緩衝層を導入することで、格子不整合を緩和し、滑らかなGaN結晶の成長に成功。
2. p型GaNの実現
MgをドープしたGaNに低エネルギー電子線照射処理(LEEBI)を行うことで、世界初のp型GaNを実現。
3. pn接合青色LEDの試作
上記技術を組み合わせて、1989年に世界初のGaNpn接合青色LEDを点灯させることに成功。1993年には、中村修二教授がInGaNを用いたダブルヘテロ型高輝度青色LEDの開発に成功し、量産化への道を開いた。
【成果の意義】
青色LEDの発明は白色光源の実現を可能にし、照明技術に革命をもたらした。省エネ・長寿命・高品質な照明が普及し、医療・通信・エレクトロニクスなど多分野に波及。2014年にはノーベル物理学賞を受賞するなど、科学と社会に大きな影響を与えた。
【用語説明】
・GaN(窒化ガリウム):広いバンドギャップを持つ半導体材料で、青色光の発光に適している。
・p-n接合:p型とn型半導体を接合した構造で、LEDの基本構造。
・AlN緩衝層:GaN結晶成長の際にサファイア基板との格子不整合を緩和するための層。
・InGaN:窒化インジウムと窒化ガリウムの混晶で、青色発光に適したバンドギャップを持つ。
●IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)
電気・電子やその関連分野の学術研究団体。アメリカ合衆国に本部を置く。IEEE Milestoneは創立100周年を翌年に控えた1983年に創設された。
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