【画像】もはや完成形! シート跳ね上げの進化を見る
ボックス型ミニバンの3列目シートには、車種によって大きく2つの格納方式がある。左右への「跳ね上げ式」と「床下格納式」だ。
それぞれ一長一短があり、左右跳ね上げ式は「格納操作に手間がかかる」、「跳ね上げたシートに荷室幅を取られる」、「そのときの見栄えもあまりよろしくない」というのがそれまでの短所。一方の床下格納式は、「シートのサイズが小ぶりになる」、「荷室下への反転格納式だと荷室の収納物を出さないと格納できない」といった弱点がある。

●左:左右跳ね上げ式(エスクァイア)、右:床下格納式(ステップワゴン)

●左:先代ノア、右:先代ステップワゴン
左右跳ね上げ式は今のカタチのミニバンが出現する以前の、キャブオーバー1ボックスの時代から採用されている。初代ノア/ヴォクシーまでは格納のしかたも昔ながらで、1:背もたれを前方に倒す 2:シートを座面ごと側方に持ち上げる 3:座面裏のストラップのフックをルーフサイドのアシストグリップにかけて固定する 4:シートの脚部を折り畳む、という操作が必要だった。
特にシートを持ち上げるのは大の男でもズッシリ重く、しかもその状態をキープしないと固定ストラップをかけることができない。3列目シートの左右跳ね上げ操作は男性ユーザーでもかなり面倒で、小柄で非力な女性には非常にハードルの高い力作業だったのだ。

●初代ノア/ヴォクシー(2001年)
それを一変させたのが、2007年6月発売の2代目でお目見えした世界初のワンタッチスペースアップシートだ。
跳ね上げ操作はまさにワンタッチ。

●ワンタッチスペースアップシート(ノア/ヴォクシー:2007年)
先代の3代目ノア/ヴォクシーは2014年1月のフルモデルチェンジで登場。ワンタッチスペースアップシートの進化点は、ズバリ薄型化だ。目的は2つあった。
ひとつは、クラス初となる2列目キャプテンシートの超ロングスライド採用(810㎜)。ワンタッチスペースアップシートが先代のままでは、2列目に横スライド機構を追加しても跳ね上げた3列目シートに干渉してしまい、実現することができなかったのだ。もうひとつは、左右跳ね上げ式の短所である格納時の荷室幅を拡大すること。

●超ロングスライド(ノア/ヴォクシー:2014年)
そのために、ワンタッチスペースアップシートは座り心地を損なわないよう配慮しながら座面・背もたれとも薄型に設計された。
おまけに、ビルトインのようなスッキリ格納で見栄えも向上。これで左右跳ね上げ式のデメリットは格納操作以外の点でも大きく改善されたのだ。斜め後方視界については180度にワイド化したバックモニターでカバーするなど、安全面についても抜かりはなかった。

●左:2代目ノア、右:3代目ノア。格納した3列目席の幅に注目
そして、8年ぶりにフルモデルチェンジされた4代目の新型ノア/ヴォクシーでは、先代で手をつけられなかった格納時の固定方向が刷新された。ドアやボンネットと同様のストライカーロック機構を採用。跳ね上げたシートをそのまま軽く押し込めば、シートに内蔵のストライカーとDピラー部のラッチがかみ合ってロック。ラッチのロック解除レバーを引けばシートの展開も簡単にできる。固定用ストラップのバックルをはめたり外したりする手間すら必要なくなったのだ。操作はホントに片手で楽々。

●ワンタッチホールドシート(ノア/ヴォクシー:2022年)
ノア/ヴォクシーにとってワンタッチの跳ね上げは当たり前。今度は跳ね上げの固定までワンタッチだから。……そんな開発陣の志の高さと達成感が伝わってくるような、ワンタッチスペースアップシート改めワンタッチホールドシート。しかも、これは新型ノア/ヴォクシーに雨あられのごとく投入された、ユーザーの購買意欲を刺激する新装備・新機能のひとつに過ぎない。
その商品力はスゴい!というより、もはやオソロシイ!!のである。
〈文=戸田治宏〉