第1回 フォーラム8 ラリー・ジャパン 2022
日時:11月10~13日
サーフェイス:ターマック
SS総走行距離:283.87km(SS数19)
サービスパーク:豊田市
ラリー・ジャパン 2022は11月13日ラリー最終日を迎え、前日トップに立ったティエリー・ヌービル(ヒョンデ)がポジションを守りきり今季2勝目を飾った。総合2位にはヒョンデのチームメイトであるオィット・タナックが入り、トヨタGAZOOレーシング(TGR)の勝田貴元が地元ラリーで見事3位表彰台を飾った。

●1位のヌービルが勝田に真ん中を譲った表彰台の1シーン。ライバルチームでもクルー同士のリスペクト精神を忘れないのがWRCのいいところだ
サバイバルラリーの様相が、ついに最終日まで続いたラリー・ジャパン2022。最終日は予報通り雨が降り、前日までとは打って変わったウェットコンディションとなった。この日のステージはサービスを挟まず一気に走り切る5本で争われる。
朝のうちは降っていなかった雨は、時間が経つにつれポツポツと路面を濡らし始める。午前の3本のステージこそドライコンディションだったが、午後の2本は完全にウエット路面。最終パワーステージの頃には雨は本降りになっていた。ウェットタイヤを積んでいかなかったクルーは、失速せざるを得ない状況に。ヒョンデの2人はウェットタイヤを積んで行ったのに対し、TGR勢は勝田以外のクルーはドライのみを選択。これが明暗を分ける結果となった。


●総合優勝のティエリー・ヌービル
「勝利を争っているラリーのなかで最悪の1日だった」とラリー後の会見で語ったヌービル。厳しいトップ争いだったが難しいタイヤ選択が成功し、勝利を得たことで最高の1日になったと最後は笑顔で締めくくった。


●ヒョンデでのラストラリーを2位で飾ったオィット・タナック
2位のタナックに最後は引き離される形にはなったものの、見事地元開催のWRCで表彰台に立った勝田貴元。計6本のタイヤ選択のなかで、彼だけはTGR勢で唯一ウェットタイヤを1本だけ積んでスタートしていた。「雨の予報だったので、本当は2本積んで行きたかったんです。でもチームの戦略から1本と決まりまして」。その1本のタイヤを右フロントに装着して走った。

●日本で、地元愛知でその速さを見せてくれた勝田貴元
「1本だけウェットというのは、さすがに今回が初めてでした。アクアプレーニングになるとものスゴく怖いです(笑)。例えるなら、ショッピングカートみたいにクルクル回りそうで。これなら4本ドライの方が予測しやすかったかもしれないですね」。とはいえ、4位のオジエに12秒差まで迫られながらもこの厳しいラリーを一度もストップすることなく、持ち前の安定感を最大限に発揮して得たポディウム。勝田だから得られた、TGR勢の最上位フィニッシュと言えるだろう。最終ステージ後の表彰式では笑顔が弾けた。

●最終ステージに駆けつけた家族と喜びを分かち合う勝田貴元
ウェットを持っていかなかったTGR勢は、オジエが4位、午前までは優勝争いをしていたエヴァンスは6位、チャンピオンのロバンペラは12位でフィニッシュしている。
◆フィンランド人ドライバーが全クラス制覇シリーズチャンピオンの行方が決まっていなかったWRC2クラスは、エミル・リンドホルムがクラス3位で無事に完走し年間王者となった。「本当に信じられない思いです。チームやサポートしてくれたみんなに感謝をしています。(直接対決のカイエタノビッチがリタイアしてからは)結果を求められないと分かってからは、リラックスして楽しめました」。とラリー後の会見でコメントしている。

●コ・ドライバーのレータ・ハマライネン(左)と共にフィンランド人コンビがWRC2を制する
これで、今季のWRCの全クラス(WRC、WRC2、WRC3)をフィンランド人ドライバーが制したことになった。過去にもフィンランドは、ユハ・カンクネン、トミ・マキネン、マーカス・グロンホルム、アリ・バタネンなど有名なラリーチャンピオンを輩出してきた。WRCではローブとオジエのフランス人時代がここ数年続いていたが、フィンランドの黄金時代が再びやってきそうだ。

●WRC2ドライバーズチャンピオンのエミル・リンドホルム
さまざまな問題を残しながらも、なんとか無事に閉幕した2022年のラリー・ジャパン。来年は、TGRが地元で勝利を飾るシーンをぜひ見たいところだ。これで今季のWRCは全ラリーを終え、各チームは来年1月のラリー・モンテカルロまで短い休暇期間に入る。
<写真=高橋 学 文=青山朋弘>
