【画像】60年の歴史を持つ歴代キャンター
いすゞ エルフなどのライバルの動向も踏まえ、小型四輪トラックの市販モデルは積載量を2トンに拡大し、排気量を2000㏄にアップした新開発の4DQ型ディーゼルエンジンを搭載。1963年1月に完成し、同年3月から「キャンター」として発売された。ライバルがひしめくキャブオーバー型2トン積み四輪トラックの分野に、三菱がふそうブランドで初参入したのであった。

さて、キャンターというネーミングであるが、完成を前に社内公募を経て1962年10月26日に決定された。この時、小型トラックと小型ブルドーザーの新製品のネーミングを同時に公募したもので、トラックは「キャンター」に、ブルドーザーは「カーフ(かわいい小牛)」に決定した。
キャンターとは英国南東部にある小都市の地名「カンタベリー」の省略形。中世後半になると現在では世界遺産として有名なカンタベリー大聖堂への巡礼の際に、馬に乗った巡礼者の速足のペース(カンタベリー・ペース)からキャンターという言葉に発展。英語で「馬が駆け抜けること」を意味し、馬術用語で言えばギャロップ(最全速)とトロット(速歩)の中間にあたる。車名としては、駿馬の駆け足のように軽やかに走り回る小型トラックとして命名。
ペットネームの応募総数はトラックとブルドーザーの案を合わせて9242通で、英語、ドイツ語、フランス語、ラテン語などさまざまな案があり、最終決定までかなり手間取ったという。トラックのほうは、他社のクルマを参考にしたと思われるものが多く、応募数第1位はポニー(64票)、2位ダイヤ(63票)、同数3位スリーダイヤとダイヤエース(38票)、5位ロビン(33票)など。やはり三菱のスリーダイヤにちなんだネーミングが多い。そのほか、金時号や桃太郎、ふじやま、チビわんちゃん、チビッコスーパーといった案もあったという。採用案は1人から提案があったキャンターだが、佳作には13人から応募があった「ライナー」が選ばれた。ギャロップやダイヤモンドライナーといった採用案や佳作に近い案もあったとのことである。
当時、三菱は小型乗用車では「コルト」を発売(1962年6月)したばかりで、コルト=若駒のイメージから馬に関連した言葉で歩調を合わせたようだ。
〈文=ドライバーWeb編集部〉