公園と聞いて多くの人がイメージするのは、それなりに広い空間にベンチや遊具があり、木々などが植えられた場所だろう。しかし、世の中には驚くほど小さな公園もある。


それがアメリカはオレゴン州、ポートランドにある、「ミル・エンズ公園」。その直径は、わずか60.96cmしかない。

場所はウィラメット川近くを走るナイトー・パークウェイとテイラー・ストリートの交差点。公園はその中央分離帯にしずかに存在している。写真の通り、一見すると単なる植え込みにしか見えないのだが、れっきとした市の公園であり、世界でもっとも小さい公園としてギネスブックにも登録された。

まあ似たような植え込みはどこにでもあるし、もしかして登録した者勝ち? なんて気もしてしまうが、一体なぜ公園として登録することになったのか。現地の観光協会の方に話を聞いてみると、
「かつてあった地元紙『オレゴン・ジャーナル』で、この公園を舞台にしたコラムが連載されていたんだ。それで有名になったんだよ」
そのコラムの名前が公園名でもある「ミル・エンズ」だったそう。

コラムを執筆していたアイルランド人のディック・フェイガンさんは、もともと街灯を立てる予定だったこの場所が、空き地のままになっているのをオフィスの窓から発見。公園にしようと思い立ち、草花を植えたのだという。

コラムには、公園を舞台に繰り広げられる様々な出来事が書かれている。なんでも公園には、レプラカーンと呼ばれるアイルランドの伝説の妖精が住んでいて、フェイガンさんは妖精のリーダーが見える唯一の人間という設定。
コラムはフェイガンさんが1969年になくなるまで続いた。

その後1976年には正式に市の公園になり、ときには公園内にミニチュアのスイミングプールや観覧車がつくられたり、バラが植えられたり、さまざまな変化をみせながら、ポートランドの人々を楽しませている。

最初は単なる植え込みに見えても、“妖精が暮らしている”なんて聞くと、ちょっと特別なものに見えてくるから不思議。ドカンと足を踏み入れるのは難しいものの、つま先だけも触れてみれば、よい旅の記念になるのでは?
(古屋江美子)
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