寝る前にも飲めるイタリアの大麦コーヒー、そのお味は?
カフェ・ドルツォで作ったオルツォ・カプチーノ


コーヒーが有名な国は世界中でいくつかあるが、実はイタリアもそのひとつ。街中にはバールと呼ばれるコーヒーショップがいたるところにあり、イタリア人は1日に何度も利用する。
仕事の合間や食後などに立ち寄って、止まり木のようにほっと一息つくことができる大切な場所だ。

そんなイタリアで、通常のコーヒーと並んで人気が高いのが大麦コーヒーだ。どんなコーヒーなのか、ちょっと紹介してみたい。

刺激が少なく、マイルドで飲みやすい


大麦コーヒーとはその前の通り、炒った大麦をコーヒーのように抽出して作られる飲み物で、イタリアではカフェ・ドルツォ(Caffe d'orzo)と呼ばれる。コーヒー豆で作られる通常のコーヒーほどではないにせよ、イタリアではごく一般的な飲み物だ。バールやレストランに行けばメニューには必ずあるし、粉はスーパーなどで簡単に手に入る。ちなみに価格は500g入りで1〜2ユーロ程度(約130〜260円)。
コーヒーと比べると4分の1くらいの値段で手に入る。

寝る前にも飲めるイタリアの大麦コーヒー、そのお味は?
コーヒー豆売り場の一角に大麦コーヒーのコーナーもある


箱の中身は下の写真のような感じ。大麦を粗く挽いて炒ったそのものという外見だ。土のような見た目にすこしギョッとするが、鼻を近づけると麦の香ばしい匂いがする。

寝る前にも飲めるイタリアの大麦コーヒー、そのお味は?
試しにそのまま食べてみたが、かなり苦味が強い


飲み方は通常のエスプレッソと同じで、マキネッタにセットし直火にかけて抽出する。一応ペーパードリップでも飲めるが、苦味が強くならないよう粉の量は控えめにしたほうがいいようだ。


寝る前にも飲めるイタリアの大麦コーヒー、そのお味は?
直火にかけて3〜4分ほどで抽出できる


そして抽出したものが下の写真。デミタスカップでなくグラスで恐縮だが、通常のコーヒーに比べて少し色が薄いのがおわかりいただけると思う。

寝る前にも飲めるイタリアの大麦コーヒー、そのお味は?
コーヒーに比べると少し水っぽい色をしている


味はマイルドで刺激の少ないコーヒーといった感じ。苦味もあるが、それよりは炒った麦の香ばしさが強く出ている。これを「物足りない」と感じるか、それとも「飲みやすい」と感じるかは人によって異なるだろう。
最近は日本でもCEBADAコーヒーと呼ばれるスペインの大麦コーヒーが発売されて賛否を巻き起こしているが、イタリアのカフェ・ドルツォはレモンピールが入らない分、味の違和感は少ないかもしれない。


ちなみにカフェ・ドルツォは抽出するものの種類なので、通常のコーヒーのようにエスプレッソやカプチーノ、マキアートなどをさまざまなバリエーションで飲むことができる。個人的には大麦の香ばしさはミルクとの相性がいいと思うので、試すのであればオルツォ・カプチーノをおすすめしたい。

寝る前にも飲めるイタリアの大麦コーヒー、そのお味は?


寝る前でもまったり飲めるコーヒー


イタリアでは、カフェ・ドルツォはどんなときに飲まれているのだろうか。

冒頭でも触れたが、イタリアでは1日に何度もバールに立ち寄りコーヒーを飲む人が多い。馴染みの店主や常連同士で喋り、ほっと一息つく時間は誰にとっても貴重なものだ。しかし、1日に何杯も濃いエスプレッソを飲むのはあまり体に良くない。
そんなときに飲まれているのがカフェ・ドルツォなのだ。

大麦から作られているカフェ・ドルツォにはカフェインが含まれておらず、コーヒーに比べると刺激が少ないので胃も荒れにくい。また、イタリア人は一般的にコーヒーが好きだが、中にはカフェインが苦手な人もいる。そんな人でもカフェ・ドルツォを注文すれば、同僚や友人に付き合ってバールに行くことができるのだ。

飲み過ぎを心配する必要もなく、誰でも楽しめる。そういう意味では通常のコーヒー以上にカフェ文化の形成に貢献しているとも言える大麦コーヒー。
寝る前にまったりと飲みたいときにもおすすめ。コーヒーが好きで何杯でも飲みたいという人にこそ試してみてほしい。

(鈴木圭)