売れまくっているヒートテック。すごーく薄いのにあったかい、らしい。
筆者もブームの流れにのって一枚買ってみた。今まさに着ているのだが、確かにあったかい、ような気がする。でも、「ただの気のせいじゃない?」と言われると、気のせいのような気もする。そんな心のモヤモヤを解消するべく、ヒートテックがほんとうにあったかいのか、調べてみた。

ユニクロからヒートテックがはじめて発売されたのは2003年。当時のプレスリリースには、ヒートテックがあったかい理由として、3つの点が指摘されている。


1.保温:中が空洞の糸を65%使っており、空気層の断熱効果であたたかさを外に逃がさない。
2.ドライ:吸収した汗は、表面積の大きな繊維によって拡散し、すぐに乾くので体の冷えを抑える。
3.発熱:吸湿性に優れた特殊な綿が、体から蒸発する水分を吸収して熱エネルギーに変換し、素材自体が温かくなる。

1と2はわかる。「?」なのは3だ。吸収した水分をエネルギーに変換って、そんなこと、ありえるの? これについて、ヒートテックをユニクロと共同開発した、東レ株式会社の担当者に問い合わせてみたところ、こんな回答をいただいた。


「ヒートテックが発熱するのは、『吸湿発熱』という原理によるものです。人間の体は、とくべつ汗をかかなくても、1日約800ミリリットルの水分を水蒸気として発散しています。この水蒸気は運動エネルギーを持っていますが、繊維に吸着したときに、運動エネルギーが熱エネルギーに変換されます。これが発熱の原理です」

ちなみに、この吸湿発熱はどんな繊維でもおこる。つまり、あなたが今着ている服でも吸湿発熱はおこっている。ヒートテックは、この吸着熱が、衣服の内側(皮膚に近いほう)で、たくさん発生しているというのがポイントなのだそうだ。


しかし、ちょっと待てよ。繊維に吸着した水蒸気は、いずれ繊維から外の空気へ出ていく。このとき、吸着したときと同じだけの熱エネルギーを、今度は運動エネルギーとして持っていくはずだ。そうすると、発熱量と放熱量が同じになるから、あたたかく感じないのではないだろうか?

これについての詳しい回答は得られなかったが、おそらくこういうことだ。衣服の内側で吸着した水分子は、繊維を伝って衣服の外側へ移動し、外に出る。すると、衣服の内側は吸着熱であたたかく、外側は放熱で冷たいという温度差が発生する。
だから、体はあたたかく感じる。

この温度差を生み出すためには、内側のあたたかい空気を逃がさない「保温」と、繊維の水分をすばやく拡散させる「ドライ」という機能が必要になる。これは、先のリリースで述べられていた最初の2つの機能である。結局、ヒートテックは、普通の繊維にもある3つの機能「保温」「ドライ」「発熱」のバランスが、いい感じにとれている、ということなのだろう。

ちなみに、ヒートテック以外にも、ミズノのブレスサーモなどの「発熱する服」はあるが、基本的な原理は同じであると思われる。

というわけで、たぶん、ヒートテックはあったかい。

(珍満軒/studio woofoo)