人々は、一心不乱にモグラの頭を叩き、その回数を競うという奇妙なゲームで盛り上がる。1匹も逃すまいと、穴から出てくるモグラを、次々とハンマーで叩きまくる。
そう、「モグラ叩きゲーム」だ。

モグラはもともと、庭や畑を荒らす動物として嫌われてきた。だから、モグラを叩きたくなる気持ちは理解できる。でも、実際にハンマーで叩くなんて非効率。撃退用の特殊な機械や、捕獲器が使われてきたはず。
一体どうして人はモグラを叩くようになったんだろう。


世界初のモグラ叩きゲームは、1974年に登場した正式名称「モグラ退治」。株式会社トーゴっていう、のちにFUJIYAMAやスプラッシュ・マウンテンなどを製作するメーカーが開発した。ただしこの会社は2004年に破たん。そこで、元社員の方が何名かいるという会社に話を伺った。

「ちょっと開発時の話はわからないですね。1号機が1974年に発売されたということは確認できたのですが……」

当時のことは、昔の記事などで調べるのが確実ではないかとのこと。
そこで調べてみると、モグラ退治が世に出るまでの経緯は以下の流れだったことがわかった。

モグラ退治が生まれたきっかけは、デザイナーがトーゴの山田社長に持ち込んだ、十数枚の絵コンテ。そこには、ライオンのしっぽやキリンの頭をつかむ子供の絵とともに、子供がひざまずき、穴から頭を出したモグラをたたく絵があったという。
それを見て、モグラを客にたたかせればおもしろいと思った山田社長。しかし、試作品での社員の評判は微妙で、製品化は難しいかに思われた。

が、しばらくしたころ、社員たちは面白がって遊ぶようになっていたという。
それは「社長!」「副社長!」などと、叫びながらたたくという遊び方だった。その様子から、山田社長は成功を確信。モグラ退治は輸出したアメリカでまずヒットし、日本でも人気のアミューズメントマシンになった。

つまり人はモグラを叩こうと思ったっていうよりも、ストレスのはけ口として、上司に見立てたモグラを叩こうと思ったってわけだ。

ちなみに現在は復刻版として「元祖・モグラ退治」っていう機種が出ている(販売は終了)。開発した株式会社ホープによると、元祖・モグラ退治には、より多くの子どもに遊んでもらうための工夫が施されているという。

「以前は叩くのが弱かったり、当て方が少しズレると、叩いてもセンサーが反応せず得点が加算されないことがありました。それが現在のモグラ退治では、空気圧を感知するエアー式のセンサーがついているため、軽く叩いてもセンサーが感知し、確実に得点が加算されるようになりました」
技術の進歩によって、よりモグラを退治しやすくなってるようだ。

穴から出る動物だったために、叩くターゲットになってしまったモグラ。
上司代わりになれば、モグラ以外でも良かったんだろうけど、得体の知れなさや、人間に害を及ぼすっていうモグラのイメージを考えると、結構適役だったのかもしれません。
(イチカワ)