仕事柄、色々な会社の問い合わせ窓口に電話をかけることがあるのだが、電話をかけるたびに気になっていることがあった。担当者につないでもらうまでに流れる保留音が、かなりの確率で「ある曲」なのだ。


ある曲とは、オリビア・ニュートン・ジョンの『そよ風の誘惑(Have You Never Been Mellow)』。ピンとこない人も、ちょっと前に稲森いずみが出演した十六茶のCMで流れていた曲といえば思い出す人がいるかもしれない。

保留音で使われているのは歌声入りのオリジナルのものではなく、楽器演奏のみでアレンジされたもの。コールセンターに電話をかけたことのある人なら、結構な確率で聞いたことがあるはずだ。

一体なぜ、この曲だけがやたらと使われているのか? そして、誰がこの曲を提供しているのだろうか?

色々と調べてみたところ、まず、コールセンターのような大規模な電話システムの保留音は、「電話保留音源装置」とよばれる装置が使われており、その装置に付属している音楽CDから、自由に保留音を選ぶことができることがわかった。

そこで、この電話保留音源装置を作っているいくつかのメーカーに問い合わせをしたところ、シナノケンシ株式会社より、「当社で製造している電話保留音源装置の付属CDに、『そよ風の誘惑』が入っていますよ」との回答をいただいた。
おお!

しかし、まだ安心はできない。筆者が聞いたことのある『そよ風の誘惑』とは、アレンジが違っているかもしれないからだ。そこで、「あのう、そのCD、貸していただけませんか?」と無茶なお願いをしてみたところ、「いいですよ」と快く承諾いただいた。ありがたい!

待つこと3日、ついに届いたそのCDをおそるおそるプレイヤーに入れ、順番に聞いてみると、37曲目に、あった。まさに探し求めていた、『そよ風の誘惑』であった。アレンジも、曲の長さも、まさに電話越しに聞いた、あのメロディーであった。


多くの企業がこの曲を採用している理由として、「この曲は昔から多くの人に愛されている曲ですので、保留中のイライラが解消されやすいのだと思います」とのこと。また、別の理由として、シナノケンシの付属CDに入っている44曲のうち、「ただいまおつなぎしております」といったアナウンス音が入っていないものが、『そよ風の誘惑』を含め、3曲しかない、ということもあるかもしれない。アナウンス音は企業ごとに変えることが多いため、アナウンス音の無い3曲から選ぶのではないだろうか。

ちなみに、『そよ風の誘惑』以外でアナウンス音が入っていないのは、フランク・シナトラの『マイ・ウェイ』と、ニール・ダイアモンドの『大空に歌おう』。どちらも往年の名曲であり、こちらを使っている企業も結構あるみたいだ。

皆さんの思い出深い!? 「保留音」は、なんだろうか?
(珍満軒/studio woofoo)