宮崎駿監督作品で特にお気に入りは? と聞かれて、意外と名前が挙がらない、でも人に挙げられると、「あーそれ私も大好き! 先に言えば良かった」と言わせてしまう!? のが、初回監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』ではないだろうか。とりわけ今の40代あたりなら共感してもらえるはずだ。
かくいう私自身、これまでこの「カリ城」、100回は繰り返し見ており、ストーリーも、数々の名場面もほぼ脳裏に刷り込まれている。

その刷り込まれた脳裏にアーカイブされていた、かのカリオストロ城が立体完成品モデルとなって、まもなく発売されてしまうのだ。

全長580mm、全高250mm、イメージスケール1/2000で再現されたカリオストロ城は荘厳かつ圧倒的なボリューム感。しかも劇中に登場するあらゆる場面を細かく忠実に再現しており、カリ城マニアの心をしっかり鷲づかみして放さない。

例えば、ヒロイン・クラリスがカリオストロ伯爵によって軟禁されていた「北の塔」の夜空の色の内壁や柱の形状。伯爵の愛用機でルパンが城脱出に使ったオートジャイロ。婚礼式典が行われた礼拝堂。そして、城の地下に隠されたカリオストロ公国の収入源・ゴート札の印刷工場も当然再現。もちろんその下には、ルパンが一度突き落とされた下水口の様子まで。

さらに水道橋によって結ばれた、伯爵とルパンの最後の決戦の舞台・時計塔も、内部の歯車まできっちり作り込まれている。そして時計台の下には、ラストシーンであらわとなる湖に沈んでいた古代都市遺跡が、水をイメージした透明のケースに覆われている。

問題はここまでのモデル再現まで行き着いた過程だ。
いまどきのアニメ作品なら、建物の美術設定には一定以上の労力が注がれるのが常識化しているが、1979年公開の「カリ城」には詳細な設定書などは存在しないのだそうだ。そこで、モデルの制作に当たったジェプラスでは、劇中の城が登場するシーンというシーンを徹底的に研究。場面によって同じ箇所の形状が異なる点があることも考慮して、3Dモデルとしてのバランスなどを考えながら、建物の全景を整形していったという。

ところで、カリオストロ城といえば、ルパンがクラリスを救出するため、夜の闇に紛れて屋根伝いに城に侵入するシーンが印象的だが、実はこの立体モデルでは「夜バージョン」も構想しているという。漆黒に覆われたカリオストロ城の姿も、ファンとしては是非見てみたい。

ちなみに、肝心のルパンやクラリスは何処に? と聞いてみたが、「わずか数ミリの時計塔の針の上に乗る人間を再現するのはさすがに……」と、断念したそうだ。
(足立謙二/studio-woofoo)
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