雨が降っては寒くなり、冬の足音が聞こえ始めた。洗濯の水が冷たくなると思い出すのは、シーツなどの大物を洗った実家の母が、洗濯物についた白いかたまりを見て、「また洗剤が溶け残ってる」と嘆いていた姿。
夏にはつかなかった洗剤の溶け残りが冬になるとついているため、我が家では「水が冷たくなったら粉末洗剤から液体洗剤へ」がお決まりになっている。私の周りでも同じように使い分けている人がいるが、はたしてこの使い分けは正しいのだろうか。
 
ライオン株式会社のお客様相談室に聞いてみると、冬になると粉末洗剤よりも液体洗剤の方が売れる傾向はたしかにあるとのことだが、「一般に粉末洗剤は冷たい水に溶けにくいと思われているようですが、冷たくても十分な水量と撹拌(かくはん)する機械力が加われば溶けます」とのお答え。花王株式会社の消費者相談室に至っては、「そのような先入観があるようですが、技術が進歩して、当社の製品は5度ぐらいの冷たい水でも溶けるように作っております」なんて具体的数値まで示してくれた。

5度の水?! そんな冷たい水でも本当に溶けるのか、自宅にあったライオンの製品『消臭ブルーダイヤ』で試してみた。

まず、この日の水温が18度であった水道水で実験。洗面器に水2リットルを用意し、表示通りの分量である小さじ約2分の1の粉末洗剤を投入すると、沈んだ粉末が次々と水面に上がってきて溶け、軽くかき混ぜると1分もせずに全部溶けた。楽勝である。

そして本命の冷水にチャレンジ。水温5度の水は、指を浸けて20秒もすれば我慢できなくなる冷たさ。そこへ洗剤を投入したところ、そのままでは溶ける気配がない。洗面器から水があふれない程度の強さでかき混ぜ続けてみると、20分ほどで粉は全部溶けた。


実験結果をライオンに伝えると、「当社の研究所では、実際の洗濯機で5度の水で撹拌すると3分ほどで溶けるという結果を得ております」と広報部下谷さん。洗濯機の撹拌の強さと回す時間があれば5度の水でも十分溶かすことができるということだ。
  
下谷さんによると、洗剤の溶け残りを防ぐ大事な条件は、「表示している水の量、洗濯物の量、洗剤の量を確認し、洗剤は全体に均一に振りかけるようにして入れること」だという。凍るほど冷たい水でない限り、水温よりも気にすべきところは使い方にあるようだ。

ただ、汚れを分解する酵素が入っている洗剤の場合、その働きは冷たい水よりも温かい水の方が有効だという。「たんぱく質や脂質の分解酵素は、40度くらいのひと肌程度の温度で最も効果を発揮します」(下谷さん)とのことなので、お風呂の残り湯を使うことは、節約のためだけでなく汚れを落とすためにも有効なようだ。溶け残りを気にすることもないし、無駄遣いも減らせる、ベストな方法はやはりこれなのだろう。

実家は冬の最低気温がマイナス10度近くになる寒い地域。溶け残ったのは、水が氷のように冷たかったか、使い方がまずかったのか……。いずれにしても、冬でも少しの工夫で美しく洗濯物を仕上げることはできることがわかった。粉末洗剤も、思い込みで買い替えるのではなく、賢く使いこなせるようになりたいものだ。
(ミドリ)
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