韓国では広く飲まれている、プラスチックのボトルに入ったマッコリ。最近は日本でも気軽に手に入るようになったが、このキャップを開けるのに苦労した人は、結構多いのでは。

というのもマッコリは、そのまま開けると沈殿物と上澄みが分離しており、かといって良く振ると炭酸がふくれ、キャップを開けた途端ブシューと吹き出てしまうからだ。

服やテーブルが甘いマッコリまみれになる惨事を防ぐべく、筆者などは恐る恐るボトルを振り、わざわざシンク台や野外に行ってふたを開けるという、煮え切らない方法でそのお酒に臨んできたのだが、もうそんな自分とはサヨナラしたい。
このたび、マッコリのキャップを開けてウン十年の韓国人たちに、実に多彩で鮮やかな、マッコリボトルの振り方・開け方を教わってきました。

ソウルは梨秦院のマッコリバーで同席したAさんは、ボトルを上下逆さに持ち、大きなスイングで5~6回上下にゆすり始めた。確かにこの方法なら沈殿物がよく混ざりそうだが、でもそんなに振っちゃって大丈夫ですか。
すると彼はボトルを両手でわしづかみし、一筋のラインを刻み込むように指を食い込ませた(写真)。5秒ほどその状態を保ったあと手を離し、静かにキャップを開けると、あら見事、確かにマッコリは噴き出さない。指を食い込ませたことでボトルに穴が開いたわけではないのに、これはちょっと不思議である。

マッコリバーの店員Bさんに開け方をお聞きすると、振り方はAさんとほぼ同じだが、彼女は片手でボトルをつかみ、指を食い込ませた状態をキープしつつ、もう一つの手でキャップを開いた。Aさんとは違うようだが、「へこませたままふたを開けるのがポイント」と熱弁する。

Cさんの場合、ボトルをへこませるというアプローチは前述の2人と同じだが、一個所を押し込むのではなく、もみしだくように、数個所を何回かに分けて圧迫。その後、キャップの頭を、指の爪でコンコンと5~6回叩いた。
それは何のおまじないか、と思ったのだが、彼に言わせるとこのコンコンも、マッコリをあふれさせないための大事なプロセスだという。

会社員Dさんは振り方が大胆だ。キャップの付け根あたりを小粋に持ち、そこを中心にボトルの底をぐるんぐるんとまわし始めた。ソムリエのような、熟練した手つきである。この振り方なら、ボトルの上部にたまっている空気がマッコリと触れることが少ない、ということだろうか。
彼は先のふたりのようにボトルをへこませることなく、そのままキャップを開けた。すると、おお、ちょっと噴き出た(が、まあ許容範囲ではある)。

最後に、学生Eさんに上手な開け方を教えて欲しいと言うと、おもむろに、つまりボトルを一切ゆすることなく、いきなりキャップをひねってしまった。もちろん中身が溢れることもないが、それって味、混ざっていないですよね?
Eさんいわく、「混ざっていないのも美味しいですよ」。それってあり? と思ったが、これは彼だけの趣味ではなく、上澄みと濃い部分を別々に楽しむのが良いと考える韓国人は、結構多いよう。

Aさんは、「一番簡単なのは、一度ヤカンの中にマッコリを開けてから振ること」と教えてくれた。
「あと、飲んでいるうちにコップの中のマッコリも分離するから、時々かき混ぜてあげるといいよね」と、使っていた箸を一本取り出し、マッコリをぐるぐるとかき回しはじめた。
それもありですか。

土地の食べ物には、その土地ならではの楽しみ方がある。韓国人とマッコリ談義を楽しみながら飲むマッコリは、いつも以上に美味しかったです。
(清水2000)
編集部おすすめ