映画、ゲーム、小説、マンガでゾンビが続々リリースされている 2010 年、アメリカではついにゾンビの連続ドラマ「THE WALKING DEAD」が 10 月から放送される。「ショーシャンクの空」「グリーンマイル」「ミスト」で有名なフランク・ダラボン監督がエグゼクティブ・プロデューサー、さらに第一回の脚本/監督を務めるという、ゾンビファンでなくても期待の新作だ。
(ただし日本でのソフト化は未定)

しかし日本ではアメリカに先駆けて、既に 7 月からゾンビがテレビで連続放映されている。深夜に。アニメで。

「学園黙示録 HIGHSCOOL OF THE DEAD」(DVD)(以降 HOTD)は月刊ドラゴン・エイジで連載中のマンガが原作。頭部を破壊するまで人を襲い続ける〈奴ら〉が突然発生し、パニックになった地方都市を高校生男女を中心とした一行が家族を探してサバイブする。(〈奴ら〉はどうみてもノロノロした歩くゾンビですが、あえて他の言葉で呼ぶのがゾンビ映画のお約束の一つです)

「HOTD」は「過剰」なアニメだ。主人公一行はメチャクチャな精鋭ぞろい。主人公は普段は優柔不断で頼りないのに危機に陥ると大胆な決断でリーダーシップを発揮するし、小太りでメガネな男友達はアメリカで積んだ一ヶ月の特訓であらゆる銃器を使いこなすし、槍術部の女子高生は大の大人を軽々持ち上げる腕力の持ち主だし、剣道部の女主将は一撃必殺どころか一撃で二、三体を仕留める。一行に立ちふさがる〈奴ら〉は、倒すくらいでは済まされない。血しぶきとともに三、四メートルほどブッ飛ばされる。

ちなみに女性は全員巨乳。武器を振るたび、銃を撃つたび、振り向くたびに乳が水風船のように跳ね上がる。
横から乳をかすめる弾丸を揺らしてかわす、通称”おっぱいマトリックス”は2ちゃんねるでも話題になった。(”おっぱいマトリックス”は第8話 15:26 あたり。9/3 11:59 までこちらから無料で視聴可能!


そして一行以外の他人は悪い方向にメチャクチャだ。友人を蹴倒して逃げようとする女子高生、恐怖につけこんで生徒を洗脳する教師、おかしくなって他人の連れの胸を揉みしだく男、助けを求めにきた人を刺し殺す一家の主、バリケードを突破しようとする群衆をロード・ローラーで一掃する警察。すべてが極端で、ほどほどのものは存在しない。

でも「HOTD」の「過剰」さは、中高生のときに見ていた風景と程度の差はあってもよく似ている。友人はみんな掛け値無しに凄い奴だと思えたし、女性の胸は今より揺れて見えたし、知らない他人はバカに見えた。世間は狭くてシンプルでくっきりしていて、自分はもっと大きく思えた。

私の場合は高校を卒業して友達と別れて大学いって就職していろいろあって、世間が広くて複雑になって、自分は思ったよりも小さくなった。主人公の一行は学校を飛び出したあと、<奴ら>をブッ飛ばしながら頼りにならない大人を踏み越えて、一人も欠けずに精鋭だらけのままで街を駆け巡っている。

まだアニメも先が長いし原作も連載中だけど、最後はどうなるか気になる。このまま戦い続けるか、もっと大きな世界に飛び出すか、噛まれてゾンビになってしまうか。
自分はゾンビになったけど、こいつらはどうなるかな、と。(tk_zombie)
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