高平哲郎*著『今夜は最高な日々』によれば、それはこういうことらしい。
ジャズのツアーでその日の演奏を終えたジャズマンたちは、宿舎に向かうバスのなかで、ツアー・コンダクターかバンド・マネージャーから明日の予定を告げられる。明日の朝が早いと、彼らはたいてい「エー」といやな顔をした。だが、テナーサックス奏者の中村誠一だけは、スケジュールを伝えられた瞬間、明るく「いいとも!」と答えたという。
「いいとも」の開始当初からかかわっている著者が書くだけに、ここから番組のタイトルがついたというのは信憑性がある。
*高平哲郎氏の「高」は正しくは、いわゆるはしご高ですが、機種依存文字のため、本稿では「高」の字を使っています。
300ページを超えるボリュームの本書には、著者がこれまで――本書では1980年代を中心に語られる――出会った人びとについて、上記のようなエピソードが随所にちりばめられている。
著者は1970年代、創刊当初の雑誌「宝島」の編集にたずさわったのち、アイランズという事務所を設立、編集やラジオ・テレビの構成の仕事を中心に手がけるようになる。タモリとの出会いは70年代半ば、新宿のスナック「ジャックの豆の木」でのこと。その後80年代に入ると、「いいとも」や、本書の題名の元になった「今夜は最高!」といったタモリの番組を担当することになる。