(Part1、Part2、Part3)
ーーうまく言葉になりませんが、デザイナーのプロデューサーとしてパイオニアでやってらっしゃったことと、ゾンビのお好きな理由が何かシンクロするような気がしました。
稲船 そうですか? ……でも、つらいもの、怖いものが好きなわけじゃないんですよ。よくつらいものとか怖いものとか痛いものとかに負けたくない人っていますけど、ぼくもそうかもしれない。人一倍恐がりだからホラー映画を観ているのかもしれないし、ムチャクチャ欲望に弱いから欲望に負けない人間を描きたいのかもしれない。肝試しですね。自分の弱い部分を克服したい。
ーー弱さを克服するために、普通の人なら嫌がることをあえてやる
稲船 ぼくは苦しいことがあると、もっと苦しいことを選びなさい、と人にいいます。自分もそうします。今が苦しいから逃げるんじゃ無くて、もっと苦しいことを選ぶ。それを乗り越えちゃえば、今苦しいことぐらい全然ラクになる。たとえば、仕事を頼んで「いやもうこれ以上無理です稲船さん」っていう人にはすっごい怒ります。そうじゃない。
ーーすごく仕事がお好きなような……
稲船 逆です。大嫌いですよ! 早く引退してラクになりたい。
ーーすみません……。コンソールゲームは家庭用ゲーム機、ソーシャルゲームはmixiとかGREEなどのソーシャルネットワークサービスでプレイするゲームなので、全然違いますね。嫌がりながらも新しい試みを次々に始められるコツってなんですか?
稲船 簡単なことです。壁が低ければできます。ぼくは影響されやすいから、受け入れちゃうわけです。HEROSっていう超能力者がたくさん出てくるテレビドラマに、ピーター・ペトレリっていう会った相手の超能力を身につける超能力者が出てくる。ぼくもその能力を持ってるってみんなに言っています。いろんな人やものの良いところを自分の中に吸収する。俺のほうがうまくできる、俺はこっちのほうが好きだから、ってプライドがあるとダメです。その壁が低ければ全部吸収できる。
ーーやっぱり「あえてやる」わけですね。ソーシャルゲームとコンソールゲームを比較して、新しい、いつもと違う、と感じられたことはありますか?
稲船 ソーシャルって、今手がけているコンソールよりもずっと浮気性な人達を相手にすることで、ファミコンを初めて作ったときにも似たような感覚があったと思う。入ってきた人が「あーやっぱ面白いよね」と思って定着するまでは、たくさん入ってくるけどたくさん出ていきます。それをコンテンツと言うのかどうか分からないけど、まだソーシャルでは固まってない。
ーーがっちりゲームデザインして楽しませるソーシャルという意味でしょうか?
稲船 ソーシャルでももっとゲームを楽しめばいいんだよ、と押しつけちゃうのはダメです。彼らはゲームだけではなく、周りまで含めて全体をゆるく楽しんでいる。だから、昔のアーケードゲームみたいに点数を上げていくだけではなくて、人との出会いとかいろんなモチベーションがユーザーの中にあることを理解した上で、変に凝り固まったゲームを作らないようにしたい。柔軟性が凄く大事だと思います。
ーーmixi で既に「三位一体」、「Wish」というアプリをリリースされています。今後の展開について教えてください。
稲船 展開方法もいろいろ試すのが大事だと思っています。mixi もやってみるし、他のものもやってみる。もしかすると半年くらいしたら全然違うサービスが現れるかもしれない。そのサービスが面白そうだったら会員が増えるのを待つんじゃなくて、すぐやろうよ、と。
ーーまた、エキサイトで公式ブログも始められます。既にダレットでやっている「稲船社長ブログ」とはどのように差をつけていきますか?
稲船 ダレットに来てくれるユーザーは、カプコンやゲームがメインだと思います。だから、ゲームであったり、カプコンであったり、オンラインゲームに焦点を絞ったほうが受けると思う。ただ、もっと違うところで言いたいこともあります。新しいサービスのことだったり、将来のことだったり。“人間”稲船敬二を感じ取ってもらいたい。アメブロでやってもいいけど、せっかく コミュニケーション研究所(コムケン)http://www.comuken.com/ の所長としてやらしてもらっているから、エキサイトでやろうと。だから、そのときにはカプコン稲船ではなくてコムケン所長稲船として語ろうかな、と思っています。
「三位一体」
決められたお題に沿って、「あたま」「からだ」「あし」のうちの一つを描くと、他のひとが描いたパーツと組み合わさってキャラクターが完成します。お題に「ゾンビ」がなかったので「坂本龍馬」で顔をゾンビにしてみたら巨乳ビキニの「からだ」が組み合わさってきて「なーんだ、みんなお題無視して自分の好きなモノ描いてるんだ」と安心しました。
「Wish」
「ほめてほしい」「ちやほやされたい」「ののしってほしい」などのリクエストに自分の思いを20文字以内でつけると、他のひとがリクエストに応じたアンサーを20文字以内で送ってくれます。「解放されたい」「ボーナスをカットしないでほしい」などのビターなリクエストもあり、欲望をぶっちゃけさせるシステムがちょっとゾンビ映画っぽいです。
全四回にわたるインタビューも今回が最終回です。ゾンビの魅力、新婚旅行のエピソード、苦しいからこそやる精神力など、ゾンビ好きとしても社会人としても一流の稲船さんのゾンビ観、仕事観はほんとうに勉強になりました!最後に、稲船敬二監督の第一回監督作品「屍病汚染 DEAD RISING」のシナリオをサインつきで3名にプレゼントします!ガチでゾンビが出てくる邦画、またデッドライジングシリーズのグッズとしても非常に貴重です。応募方法についてはこちらをご覧ください。
(tk_zombie)