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ゲームの神様「ゼビウス」の遠藤雅伸が語った「人がゲームをやめる理由」

ゲームの神様「ゼビウス」の遠藤雅伸が語った「人がゲームをやめる理由」
「ゲームの神様」こと遠藤雅伸氏も登壇したDiGRA JAPAN夏期研究大会2014
どういうエンディングが良いんでしょうね、(テレビ)ゲームって。

テレビゲームはアーケードのピンボールなどを背景に登場したため、当初は明確な目的がありませんでした。しかし1980年代に入り、長時間プレイの抑制やプレイヤーに対する目的設定などを背景に、プレイ時間の有限化という概念が登場してきます(レースゲームでは上手い人ほど早くゲームが終わる!)。そして家庭用ゲームの一般化に伴い、いわゆる「エンディング」のあるゲームが一般的となっていきました。

しかし、昨今ではネットゲームの普及やゲームのサービス化に伴い、明確なエンディングが存在しないゲームが増加しています。そこでは多くの場合、サービス終了がエンディングと同義語になります。そこまでいかずとも、MMORPGなどで友達が一人、また一人と減っていくなど、コミュニティ崩壊がゲームをやめる理由になったという人も少なくないでしょう。いずれにせよ、あまり良い「エンディング体験」とはいえないですよね。

またモバイル・ソーシャルゲームでは、「毎回少しずつ、定期的にゲームを遊ばせる」仕組みがゲームデザインに組み込まれています。その背景にあるのが、基本プレイ無料のアイテム課金というビジネスモデルです。ここでもっとも重要になるのが「継続率」という概念です。継続率と課金率には正の相関関係があります。「中断と再開」の適切な管理は、今や多くのゲームメーカーにとって死活問題なのです。

もっとも継続率を高める(そしてエンディングまで遊んでもらう)ことは、途中でプレイヤーを脱落させないということでもあります。これが非常に難しい命題であることは、言うまでもないでしょう。すべてのゲーム開発者は、この命題に向けて日夜奮闘しています。しかし、そのわりに「なぜプレイヤーがゲームをやめてしまうのか」について、きちんと調査研究されたことはありませんでした。

この(おそらく日本のゲーム研究において初となる)研究結果「ひとはなぜゲームを途中でやめるのか?−ゲームデザイン由来の理由−」が、日本デジタルゲーム学会の2014年度夏期研究大会で発表されました。発表者は「ゼビウス」「ドルアーガの塔」などの生みの親として知られる遠藤雅伸氏。現在は東京工芸大学芸術学部の教員でありながら、東京工科大学で学ぶ大学院生でもあり、同学会の理事も務めています。

詳細については、同大会の予稿集がウェブ上に掲載されていますし、Ustreamで講演内容が録画されていますので、本稿では概要について紹介するだけに留めたいと思います。SNSなどを用いて「ゲームタイトルと、止めた理由」について募集したところ、10日間で1532件の有効データを収集することに成功。その内容を分析したところ、10個の大項目に収束され、さらに35個の小項目に整理されました。

「苦痛(本来の楽しさの喪失)」「不一致(自分の趣味嗜好と一致しない)」「失敗(与えられた課題が達成できない)」「面倒(プレイに手間がかかりすぎる)「疲労(体力・気力の衰え)」「満足(納得して先に進む必要がなくなる)」「敗北(相手との実力差などによる戦意喪失)」「反省(ゲームを続けるに値しない)」「温存(ゲームを終わらせたくない)」「視覚効果(いわゆる3D酔い)」

このうち「苦痛」「不一致」「失敗」「面倒」の4項目だけで、全体の75%以上を占めています。一番回答が多かった「苦痛」には「時間/プレイに時間がかかりすぎる」「コミュニティ/オンラインゲームでの不愉快な人間関係」「繰り返し/同じ操作を何回も実施させる」「操作感/遊び方がわからない、思った通りに動かない」などが含まれます。RPGなどで延々とレベルアップばかりさせられる、などはこの好例ですね。

小項目の中で「不一致」内の「違和感」が、168件と最大になった点にも驚かされました。「コンセプトやゲーム内容が自分の趣向と合わない、テーマや世界観に共感できない」というもので、グラフィックに引かれてはじめたけど、ストーリーがクソだった、などはそのわかりやすい例。一方で課金に関する理由は27件と少数派でした。もっとも、モバイル・ソーシャルゲームだけに絞って調査すれば、また違ったかもしれません。

この発表、予稿集をぱらっと見て、Ustreamの講演を聴けば、30分もかけずに要旨をつかめます。でも、そのために費やされた労力と時間(特にデータの解析)はハンパじゃない。その昔、ある大学教授は「公共性が高いものの、めんどくさくて誰も手をつけないテーマを選び、データをコツコツと集めて整理し、論文化して社会の共有財産にするのが、良い研究」と話してくれましたが、まさにその好例でしょう。少なくともゲーム開発者であれば全員チェックして欲しい内容です。

また、予稿集で遠藤氏は「ゲーム進行に伴って難易度を上げていくレベルデザインは再考する時期にきているのではないか」と疑問を呈しました。

前述の通り難易度の上昇とエンディングの設定は、アーケードゲームのビジネスモデルと密接な関係があります。しかしゲーム機とゲームソフトを買えば好きなだけ遊べる家庭用ゲームでは、そうした固定概念から離れたゲームも登場してきました。難易度を時間におきかえ、時間をかければ誰でもクリアできるようにしたゲーム=RPGはその一つです。さらに近年ではアクションやシューティングゲームにおいても、プレイヤーの状況を逐一チェックしながら、難易度を自動調整するやり方が広まりつつあります。

一方で、前述の通りオンラインゲームやモバイル・ソーシャルゲームでは、「エンディング」の持つ意味すら変化しています。アーケードゲームや家庭用ゲームでは、エンディングは「ご褒美」であり、誇らしいものでした。しかしゲームがネットにつながり、サービス化されていく中で、エンディングがどこかほろ苦いものになるなど、本来の価値が喪失中です。

そして話は冒頭に戻ります。途中でゲームを脱落させないようにするのは、きちんとゲームを「終わらせて」もらうため。では理想の「エンディング」ってなんなんでしょう? 答えはゲームごとに違います。その回答を得る糧とするためにも、本テーマのさらなる追加研究を期待したいところです。
(小野憲史)

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