脚本:西田征史 演出:松園武大

新種の植物を探している星野武蔵(坂口健太郎)に協力を惜しまない常子(高畑充希)。
一時は、青柳家の従業員たちに取り囲まれてしまうものの、中に入ることに成功する武蔵と常子。清(大野拓朗)も交えて、ドタバタが繰り広げられた後、武蔵が材木のトラブルに関して、知識を発揮し、熊井(片岡鶴太郎)も上機嫌。
その後、新種のゲラニウム・カロリニアヌムを発見して喜んだのもつかの間、すでに新聞に載っていて・・・。
ゲラニウム・カロリニアヌムは、新聞にも書いてある通り、和名は「あめりかふうろ(アメリカ風露)」といい、発見以降、道ばたによく咲いている花としてポピュラリティーを得る。
武蔵よりも先にゲラニウム・カロリニアヌムを発見した人物は、牧野富太郎(1862〜1957年)。有名な植物学者で「94年の生涯において収集した標本は約40万枚。新種や新品種など1,500種類以上の植物を命名し、日本植物分類学の基礎を築いた一人として知られて」いる(高地県立牧野植物園サイトより)。
牧野は、明治45年から昭和14年まで東京帝国大学理科大学で講師もやっていたので、武蔵も彼と触れ合う機会はあったのではないか(ドラマは現在昭和10年)。フィールドワークに夢中で牧野の仕事に気づかなかったのかもしれない。それについては30回で回答がなされるだろうか。
ちなみに、武蔵は新種を発見したあかつきには、両親の名前をつけようと思っていて、牧野は発見した植物に亡き妻の名をつけている。とはいえ、基本的に私情はネーミングに持ち込まなかったらしい。
そんな細かいとこが気にかかる29回ではあったが、新種を発見した武蔵を祝おうと千代紙で箸置きをつくる高畑充希の手に魔法をかけられた気分に。演技の完成度が高い高畑は初々しさとは無縁。だが、全体的に小柄なので、どこか未成熟で健気な感じが漂う。指先まで神経を配って千代紙をもった小さな手には愛おしさ倍増。なんてニクい女優なんだ。
(木俣冬)