『純と愛』よりはマシだけど、まあまあおせっかいなカホコ
『過保護のカホコ』(日本テレビ・水曜22:00〜)第7話。
全然解決することがないまま問題が続出しっぱなしなカホコ(高畑充希)の親戚一同。
並木家、次女の環(中島ひろ子)の万引き癖が発覚するわ、旦那はちょいアル中だわ。
そして、祖母・初代(三田佳子)は重い心臓の病気で余命わずか……。
コメディ風味のオブラートに包まれ、明るい雰囲気ではあるものの、脚本家・遊川和彦が時々やらかしちゃう鬱展開ドラマ並に、家族の状況はメッチャクチャだ。
そんな中、ひとりだけ初代の病状を知ってしまったカホコは、バラバラになっている家族をどうにかしたいと考え、中止ムードがただよっているイトちゃんの誕生会をなんとか成功させて、初代を喜ばせようとするのだが……。
こじれまくった人間関係を、特に秘策もないまま「一生懸命」の一点突破でなんとかしようという姿は、その押しの強さとおせっかいで毎朝日本中をイライラさせていた朝ドラ『純と愛』の純(夏菜)を思い出してしまう。
ただ、幸いカホコの場合、純に輪をかけてバカなので、一生懸命でおせっかいではあるものの、まったく解決に向かっていかない一生懸命さなので、うっとうしさはあまり感じないのだ。……あと、夏菜よりかわいげがあるし!
視聴者は、問題解決に向けてトンチンカンな努力をするカホコを、親のような気分で見つめてホッコリしてしまうわけだが、そこで気になるのが、はじめてできた彼氏・麦野初(竹内涼真)の存在。
遊川さん的には、これまで思いっきり依存していた過保護な母親から独立して、自分の力で様々な問題に立ち向かっていくカホコの姿を描きたいんだと思うのだが、お馬鹿なカホコひとりではちょっと心もとない……。
ということで、イチイチ彼氏である麦野に相談したり付き合ってもらったり、というパターンになっているのだろうけど、どうも母親に依存していた過保護な娘が男に目覚めて、今度は彼氏に依存している……というように見えてしまうのだ。
必要なのかな、この彼氏設定。

ベタな感動展開をブチ壊す遊川節
さて、誕生会を成功させるには、とにかく主役であるイトちゃんの出席が必須なわけだが、チェロを諦めてからのイトちゃんの転落っぷりがなかなかグッとくる感じになっている。
プライドの高いお嬢様といった雰囲気(家庭は金持ちではなさそうだったが)が漂っていたイトちゃんだが、チェロをやめてからといいうもの、パーマを当てるわ、真っ赤っかな口紅をつけるわ、出会い系サイトにハマるわ……。
ザ・田舎のヤンキー女といったすがすがしいまでの転落っぷり!
イトちゃんを演じる久保田紗友自身、清楚なイメージが強いので「ああ……真面目だったあの子が、夏休みが明けたらこんなことに……」感があって悲しいのだ。
そんな感じで、毎日田舎ヤンキーたちと遊び歩くイトちゃんだったが、心の底ではまだピュアな部分を残しているようで、誕生会に出るように説得しにきたカホコには、「バッティングセンターでホームランを打ったら」という微妙にゆるい条件を提示したり、明らかに誕生会に連れて行く罠感全開なのに「(誕生会の日)オレとデートしようぜ」と言う麦野にまんまとついて行っちゃったり……。
結局、徹夜でバッティングセンターに挑戦したものの、ヒットしか打てなかったというカホコのマメだらけの手を見て感動したのか、誕生会に出席することに。
誕生会では、祖父母からのプレゼントとして、イトちゃんのチェロ留学資金として貯めておいたという貯金通帳を手渡される。
「これからまた、何かをやりたくなったらそのために使って」という初代(みんな知らないけど、この人もうすぐ死ぬのよ!)もうベタな感動展開だけど、まんまとナカされてしまった。……が、ここからが遊川脚本の真骨頂(?)だった。
わざわざ誕生会に出席したものの、ふくれっ面のまんまだったイトちゃんは突然ブチ切れ「ここにいる全員キライ」宣言。
それを発端に、本当は誕生会なんてやりたくなかった、カホコのおせっかいだ、イトのことも嫌いだ……とみんなの罵りあいがスタート。感動からのぶち壊し展開……遊川さん、ノッてますなー。
そんな、みにくすぎる家族の罵りあいを見て、カホコは家を飛び出していってしまう。
自分のために誕生会をセッティングしてくれたカホコを傷付けてしまったということで、責任を感じたのか、初代は家族みんなに自分の余命が後わずかであることを告白するのだった。
ここから、初代の病気を知った家族たちが一致団結して……みたいな展開だと、ベタ過ぎる感動路線だが、どうなっていくのだろうか?
親に捨てられた子がまた出てきた!
一方、家を飛び出したカホコは「家族が増えたら嬉しい」と言っていた初代の言葉を思いっきり真に受けて、麦野に対して「子ども作ろう」と提案する。うんうん、相変わらずカホコちゃんはバカでいいなー……。
今から仕込んでも、「いつ死んでもおかしくない身体」という初代に見せるのは難しいだろ……とは思うものの、まあそういうところがカホコのいいとこだよね。
しかし麦野は、「ばあばに曾孫を見せたいからって結婚しようっていうのは本末転倒だって言ってるんだよ!」と、かなり強い感じで全否定。
そこから家族ディスに発展していき、カホコもカホコで「初くんは家族がいないから分からないんだよ」と、親のいない麦野に対してなかなかデリカシーのない言葉で言い返す、家族だけではなく、このふたりの間もメチャクチャに。
子どもなカホコに対して、いつも上から目線で接している麦野だが、こと家族の話題になると、思いっきりムキになって子どもっぽい態度を取ってしまう。それだけ、母親に捨てられたことがトラウマなんだろうけど。
そういえば、もうひとつの崩壊家族。カホコの父親方の実家では、叔母・教子(濱田マリ)が、孤児施設から逃げ出してきた子どもを拾ってくるというとんでもない行動をとっていた。
麦野初(ハジメ)という名前が、遊川さんの前作『はじめまして愛しています』で母親から捨てられて施設に入っていた子ども・ハジメの名前とリンクしていることは以前も指摘したが、「親から捨てられた」というテーマは、遊川さん的にまだ掘っていきたいところなのだろう。
そして麦野のことを、カホコの祖父は「タモツくん!」と、やたらと呼び間違えていたが、タモツといえば、これまた遊川さんのドラマ『偽装の夫婦』でゲイの旦那とカップルになってしまうノンケのサワヤカ好青年の名前だ(弟子丸保)。
この辺のリンクも気になってしまうところだが、そこまでヒットしたわけではない自作ドラマのネタをちょいちょい入れ込んでも、誰も気づいてくれないからやめた方がいいよ、遊川さん。(いや、ボクが遊川ドラマを気にしすぎなのかも知れないが)
(イラストと文/北村ヂン)