すべて手がけた経験があり、90歳を超えた今も現役のクリエイター。
この、やなせさんの魅力に迫れる特別展「ぜんぶ! やなせたかし! ビールの王様・詩とメルヘン・アンパンマン etc.」が、京都国際マンガミュージアムで10月2日から12月26日まで開催中です。足跡にそって5つのコーナーに分かれ、約300点の展示品が陳列されています。
国民的キャラクター「アンパンマン」が誕生したのが50歳。初めて絵本になったのが54歳。1988年にテレビアニメになった時は69歳というから、超遅咲きの大器晩成型クリエイターですよね。
しかし、それまでもニッポンビール(現:アサヒビール)の宣伝4コマ「ビールの王様」や、アニメ「千夜一夜物語」美術監督、雑誌「詩とメルヘン」責任編集など、さまざまな仕事を手がけてきました。童謡「手のひらを太陽に」の作詞者でもあるんです。活躍の幅広さには驚かされます。
その一方で作品は、どれもロマンチシズムやメルヘン性と、「自分が傷つくことなしに正義は行えない」「ちょっとした親切を届けるのが本当のヒーロー」など独特の正義感が折り重なって作られた「やなせワールド」に包まれていることに、改めて気づかされました。
これ以外にも▽研究者によるセミナー▽パンに絵を描いて食べるユニークなワークショップ▽アンパンマングッズや絵本で、親子で遊べるプレイルーム▽「アンパンマン」紙芝居の講演など、さまざまな催しが企画されていますよ。
会場の国際マンガミュージアムも、5万点にも及ぶ単行本が壁一面に並べられた「マンガの壁」から、好きな作品を選んで自由に読めるという、他に類を見ない内容になっています。週末は親子連れが多数来館し、漫画好きの外国人観光客もちらほら。マンガ愛に満ちた空間です。
ちなみに、特別展の入り口には大きく、こう記されていました。「なんのために生まれて なにをして生きるのか わからないまま終わる そんなのはいやだ!」 おなじみの主題歌の一節で、もちろん作詞は、やなせさんです。それぞれの答えを見つけに来てください。(小野憲史)