「ストリート開拓」ストリートビューに残る宮川大輔&ザキヤマの贅沢「静止画ロケ」をご報告
「井上マサキのテレビっ子からご報告があります」第16回。ライターでテレビっ子の井上マサキでございます。この連載は日々テレビを見ていて気になった細かいこと、今のアレってアレなんじゃないのと思ったことを、週報代わりにご報告できればと思っております。どうぞよろしくお願いします。

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これぞ本当の「ネットとテレビの融合」だと思った。10月20日に放送された『ストリート開拓』(テレビ朝日系列)である。


タイトルの「ストリート」は、Googleストリートビューのこと。まだ日本国内でGoogleストリートビューに載ってない道を「開拓」する番組なのだ。宮川大輔と山崎弘也(アンタッチャブル)が実際にその地に行き、360°カメラで撮影しながらずんずん歩く。

そしてその様子は、本当に公式のGoogleストリートビューに登録されている。放送終了後も、ずっと残っているのだ……!



あんなにしゃべる2人なのに「静止画」


今回開拓したのは、京都府舞鶴市の一角。ストリートビューはザキヤマの「くる〜」のポーズでスタートし、以降約5kmにわたって2人の背中を追っていく。
「ストリート開拓」ストリートビューに残る宮川大輔&ザキヤマの贅沢「静止画ロケ」をご報告
今回『ストリート開拓』で「開拓」したのは、京都府舞鶴市の北部、大浦半島を縦断する約5kmの道のり。最終的に船で沖に出ます

『ストリート開拓』では、その様子をスタジオで振り返る。
スタジオ出演者は宮川&ザキヤマと、ゲストに倉科カナと若槻千夏。さっき「振り返る」と言ったけど、ロケのVTRは全く流れない。映像はストリートビューを一歩一歩進めるのみ。あんなにロケに慣れていて、ずっとしゃべり続ける2人なのに、「静止画」しか出てこないのだ。こんな贅沢な使い方があろうか。

これには宮川も戸惑ったようで、「オープニング10分くらいしゃべったのに」「このロケつかみきれてなかったのよ」「何してんねん思うて」とスタート直後の不安を振り返る。
「スタッフを疑ってた」とドッキリの可能性まで残っていた。無理もない。

一方のザキヤマは、そんなことお構いなし。炎天下を歩くのにタオルの用意がないことを知ると、「じゃぁお借りしましょうよと」と、周囲を見渡し「新しめのログハウスがあったんでね」と民家にタオルを借りにいこうとする(でも取材交渉は宮川にやらせる

ログハウスには親子がおりご厚意でタオルを貸してくれた。その後、道でトノサマガエルを見つける民家の窓のぬいぐるみが気になる通りかかった畑で水やりをするなど、細かい思い出話が続く(リンクは全てストリートビューのものなので、実際にご覧ください)

番組中は公式TwitterがGoogleマップのリンクと共に実況してくれるので、手元のスマホで実際のストリートビューを眺めながらテレビを見られる。ストリートビューの中に芸能人が映っていて、なおかつ本人がテレビの中で当時の様子をしゃべっているのだ。
なんだか並行世界にあるものがつながったような、不思議な感覚を覚える。

ネットとテレビの融合が謳われて久しいけど、それって生放送でリアルタイムにツイートを拾うとか、みんなでバルスってつぶやこうとかじゃなくて、こういうことなんじゃないかと思った。どちらか一方に体験を寄せるのではなく、異なる体験を同時に楽しめたらいいのだ。

……なんてことを思っていたら、ザキヤマの手によって宮川の半ケツがあらわになった場面が登場したりする。「これ不適切な画像って消さないんですかね?」と心配する若槻に、「あれは太ももだから」「俺めっちゃ足長いねん」と押し通す2人。いちおう、今のうちに見ておいたほうがいい画だと思います……!



新たな組み合わせも「開拓」


宮川大輔と山崎弘也の2人は、実はロケ初共演。宮川はこのロケですっかりザキヤマが好きになったという。
特にしゃべることもなにもない山道でも、ザキヤマはずっとしゃべり続けていたそうだ。

宮川「俺ザキヤマと初めてやったんやけど、タフやねこの人! どんどん、どんどんしゃべってきて、ガハハハハ!って笑ろうて、すげぇなって。俺もう大好きになった」

そう振り返った直後、ストリートビューの中のザキヤマは通りかかった車を止め、窓から顔をつっこんで冷房にあたっていた。「サイテーでしょ?」と手のひらを返す宮川。休憩地点でもADがザキヤマだけに日傘を差すことに納得がいかない。そしてやっぱりザキヤマは「まぁまぁ」とお構いなし。
この組み合わせ、なんで今までなかったのかというくらい息ピッタリ。

その後舞鶴自然文化園に寄り道し、カートで道を案内されたりトイレに寄ったりする一コマも。本筋に戻り、歩き続けると茂みの中に脇道がある。どうやらトレイルランニングのコースらしい。

「行ってみる?」という宮川と、行きたくないザキヤマ。ここでなんと、ストリートビューは宮川ルートとザキヤマルートの2つに分かれる。
そう、360°カメラが2台あれば、二手に分かれることも可能なのだ……!

山道を選んだ宮川は道なき道を歩くことになり、竹を踏んで大きな音を鳴らしたスタッフを「やめろやお前!」と怖がったり、半ズボンがチクチクするからとスタッフを先に行かせたりと、散々苦労して合流地点に到着。

一方、車道を選んだザキヤマは、歩いてすぐに対向車線を走る車を止め、次の瞬間には車内に乗りこんでいた。ストリートビューをひとつ進めると、ヒュッ!と車内に吸い込まれたように見えて妙に可笑しい。ストリートビューが2コマ漫画になるとは。

そしてスタジオでヒッチハイクを知った宮川は、当然ザキヤマにキレ散らかす。もう安定の流れである

「静止画旅番組」という新しいジャンル


なんだかんだで山を越え、海沿いの街までたどり着いた2人。途中で出会ったご家族の家でそうめんをご馳走になり、「冠島」という島があることを聞く。日が傾いた海岸沿いを歩き船に乗せてもらう。ストリートビューは海の上まで続き、最終的に島をバックにゴール

ここまで2人の道のりに付き合っていると、動画で見るよりも一緒に旅している気分になる。確かによくしゃべる2人で、ロケ映像がないのはもったいなく感じる(ネット限定のロケ映像はあるが)。でも、よくしゃべる2人だからこそ静止画での振り返りに臨場感があって、ずっと聞いていたくなる。静止画だからこそ浮かぶ行間がある。

これは新しい旅番組の形なのではないか。早くも次回作が見たい。スタジオでも気運が高まり、「海外でやってみたい」という声があがったが、「海外でストリートビューにない場所って、とんでもない場所では?」と、もっともな意見が出て番組は終わった。

そうそう、徹底してる!と思ったことがひとつ。スタジオゲストの倉科カナが、最後に自身が出演する舞台の宣伝をしたときのこと。上演される劇場(世田谷パブリックシアター)のストリートビューまでスタッフが用意していたのだ。「2階から3階でやってます」という倉科カナのコメントを受け、ちゃんとストリートビューの中で2階にズームしていた。いい仕事を見ました。
(井上マサキ タイトルデザイン/まつもとりえこ)

『ストリート開拓』(10月20日放送:テレビ朝日系列)
見逃し配信:AbemaTV(10月26日23時まで)