「市販されていたマンガの単行本がPDFファイルで、タダでダウンロードできる」
一見、違法に聞こえるが、これが作者公認で可能になる、新たな試みが本日始まるのをご存知だろうか?

この試みを始めるのは「Jコミ」。Jコミの公式サイトでは、絶版マンガを広告付きで無料配信する。
しかも「DRM」(購入時の端末でしか読めないなどのロック)なし。このJコミの立ち上げ人は、『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』の作者、赤松健先生だ。

出版社との契約が切れて絶版になってしまったマンガは、古本屋やオークションで買うしかなかった。これでは読者が入手するのは難しいし、インターネット上で違法にダウンロードされている現状もあり、漫画家の利益にもならない。
そこで、作者の許諾を得て、電子化した絶版マンガに広告を入れて、無料で公開すれば良いではないか、というわけだ。こうすれば、読者は無料で合法的にマンガが読めるし、広告収入で漫画家にもメリットが大きい。

従来の電子書籍の場合、DRMがかかっていて、大変不便だった。しかしJコミの場合、広告を収入源とするためDRMはなしで、読者に取っては大変使い勝手が良いし、しかも友人にファイルをコピーしてあげるのもOK。
世界中にネット上やファイル共有ソフト(P2P)で流れ、止めることが事実上不可能な違法マンガに対抗できる唯一のシステムではないだろうか。

また、作者の許諾を得たマンガについては、Jコミのサイトにボランティアが“自炊”したマンガファイルをアップし、それに広告を加えたPDFファイルをJコミのサイトで公開。これで、Jコミは日本のあらゆるマンガを保存し、誰もが閲覧できる「絶版マンガ図書館」としての役割も担える。
さらに絶版マンガだけではなく、単行本化されなかったマンガや短編・読み切りのマンガもJコミで公開することで、そのようなマンガや漫画家が日の目を見る機会も提供できる。


いずれの場合も、広告収入は全額作者のものになる予定。一部の漫画家は原稿料が安くて赤字なんていう暗い噂もよく聞くが、このシステムがそんな漫画家を救うかもしれない。

さて、このJコミの最初の試みは、本日、11月26日(金)のお昼頃に始まる(予定)。今回はβテストという位置づけで、『ラブひな』の1~14巻が1カ月間、無料配布され、ダウンロード数や広告のクリック数のデータを集計し、Jコミのシステムが成立するかを判断する。
なお、Jコミで公開される形式は、パソコンやiPod向けの「高解像度版PDF」、スマートフォン用の「軽量版PDF」、携帯電話用の「コミック・ビュワー携帯版」、パソコンのブラウザでダウンロードせずに見られる「コミック・ビュワー」。

読者は合法的で使い勝手の良い電子書籍の漫画を無料でダウンロード。作者は絶版になった漫画を多くの人に読んでもらえて利益も得られる。夢のようなこの企画が上手くいくよう、ぜひ応援したい。
(もがみ)
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