昨年からネット上で飛び交っている一つの言葉があります。
「血溜まりスケッチ」
なんだその物騒な名前!
これは今放映中のアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」に対するファンの間でのあだ名(非公式)です。
なぜそんなわざわざ血なまぐさいあだ名になってるのかを簡単に説明します。それが分かったらこの作品に対する興味がぐんと増すと思うのです。

まずキャラクター原案はマンガ『ひだまりスケッチ』を描いている蒼樹うめ。ファンシーかつやさしい絵柄と物語作りで話題になりました。
アニメーションを制作しているのはシャフト、監督は新房昭之「さよなら絶望先生」「それでも町は廻っている」「化物語」などなど、数多くの人気作品を手がけている会社です。「ひだまりスケッチ」のアニメもシャフトが作っています。
「他のアニメ制作会社は知らないけれどもシャフトは知っている」という人はかなり多いでしょう。というのも「化物語』では文字がうぞうぞ動いたり「ぱにぽにだっしゅ!」では実写が頻繁に出てきたりと、他では絶対やらないような実験的テクニックを駆使してアニメを作る珍しい会社だからです。
とはいえまだ「蒼樹うめ×シャフト」ならみんな納得していたんです。ああ、「ひだまりスケッチ」的にファンシーなノリの魔法少女もので萌え萌えキュンですね!と。ところがどっこいここにもう一人強烈な名前が入ってきます。

その名は虚淵玄
ネット上でこの名前が出た瞬間、広まったのが「血溜まりスケッチ」という呼び名でした。
 
虚淵玄という人について説明しておきましょう。
「ニトロプラス」というアダルトゲーム会社のシナリオライター・小説家・脚本家です。ただし「アダルトゲーム」と言っても、虚淵玄作品はシナリオの暴力的描写がアダルトな場合が圧倒的に多いです。
例えば「沙耶の唄」という作品があるのですが、キャッチコピーは「男女4人が繰り広げる恋愛ストーリー」となっています。素敵ですね。しかしゲームをプレイした人は仰天。予想の斜め上のさらに上空に展開する凄まじい作品になっています、いろいろな意味で。
その他にも様々な傑作シナリオを執筆していますがどう説明すればいいか……一言で言うとほぼ人が死ぬとでも言ったほうがいいでしょうか。狂気の中に飲み込まれるような物語に、数多くのファンが生まれました。
だからこそ、虚淵玄の名前を見た人はみんな背筋がゾッとしたのです。
蒼樹うめのかわいらしい絵で誰か死ぬの!? 昨年発表されてからのファンの動揺っぷりときたら、それはもう激しいものでした。
 
そして公開された公式ホームページ。あっ、普通だ! 普通の魔法少女だ! ピンクだよママ!
虚淵玄のコメントも一部引用してみましょう。
「テレビの前の皆様が暖かく幸せな気持ちで一杯になってもらえるよう、精一杯頑張ります!」
ハートフル! これはハッピーエンドくるのか?
そして放映された第一話。

魔法少女まどか☆マギカ 第1話「夢の中で逢った、ような……」(ニコニコ動画)

いきなり始まる特殊な画面作りで、奇妙な世界が広がっています。その後普通の日常になったかと思いきや、さらにまた不気味な空間へ。この異空間を作っているのは『さよなら絶望先生』のOADでOPデザインをした劇団イヌカレー。これまた特殊すぎるコラージュ映像スタッフです。
「シャフト」の持つ映像への実験性。「蒼樹うめ」のキャラのキュートさ。「虚淵玄」の持つシナリオの不穏さ。それぞれ強烈な個性です。
普通であれば混じり合わないようなこれらの個性が、決してお互い押し殺しあうこと無く成立してしまった。むしろバラバラだからこそ、そのギャップが見たこともない世界を映像の中に産んでしまっているのです。日常世界の特殊な世界設定や、ダイナミックな作画のアクションシーンも強く目を惹きます。
今後どうなるのかさっぱりわからない展開と、意味ありげなカットの伏線の数々に放映されてから世界中のファンが一気に注目しました。
Main Page - Puella Magi Wiki(ネタバレ注意)
海外のファンサイトですが、すっかり研究室状態。そのくらい「謎」の多い作品なんです。一つ怪しくなると、あれこれも不信になるのです。

では実際に「血溜まりスケッチ」だったかどうか。それとも「暖かく幸せな気持ち」になる作品だったのかどうか。
ニコニコ動画アニメワン ShowTime でインターネット配信されていますので、是非見てみてください。

「どんな願い事でも一つかなう。ただし契約をしたら魔法少女にならなければならない」。
さて、この作品がどう「魔法少女」という概念を覆していくかゾクゾクします。
これだけは言っておきましょう。「他に類の無い魔法少女物だ」ということだけは。
ニコニコ動画での放映は一週間遅れなので、ネタバレをうまく回避することだけは推奨です!(たまごまご)
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