心に疲れがたまっているあなた。
そんなあなたに一服の清涼剤。
『+(プラス)チック姉さん』!
表紙のイラストを見ると、かわいい女の子が出てくる萌えメインのマンガに見えるかもしれません。
色合いがまた絶妙なので、心理的描写なども含まれた青春物語なのかな、と感じられるかもしれません。
自分も最初はそこを期待して買いました。頭になんか乗っけてるけど、学園ものなんだろうなと。緩いテンポでいい話のあるギャグマンガだろうなと。
いいえ。そんなものありません。皆無です。
そもそもこの模型部の三人、姉さん、オカッパ、マキマキの頭にはプラモが乗っているのですが、これまったく意味ありません。
最近発売された3巻の時点まで来ても、なぜなのか一切書かれていません。
ただ、乗っているだけです。
まあそれでも、メインヒロイン3人は、かわいいです。普通に愛でることができます。
姉さんウザかわいいですし、オカッパは怖かわいいですし、マキマキは普通かわいいです。
ところが、他に出てくるキャラクター達が、人間の道から外れたキャラだらけ。
電車に乗ったら全員痴漢だとか。
木の幹の中に住んでいて説教をするおじさんだとか。
マンションで一人で赤ちゃんプレイしているおじさんだとか。
そんなんばっかりです。
あれ、これどこかで見た事あるぞ……いや、絵柄は確かにきれいで上手だし、現代的だけど……萌えるけど……。
あ、そうだ。
これは赤塚不二夫マンガのノリだ。
内容が不条理なネタの乱射状態なんですよ。ツッコミ要員が皆無。
たとえばとある回では、ひたすら婆さんが車をひっくり返していくだけでした。
それが何なのかと問われれば! ……きっと何の意味もない。
やたらしつこく出てくる「美しさの人」の行動やセリフは、出てくるだけでギャグになるという強烈なキャラ立ち。
そこに加えて、姉さんが純真な悪意を持って相手のいやがることを連打しまくる。ところがストンと最後にまとまる状況が訪れる。
まるで天才バカボンのパパですよ。「これでいいのだ」のセリフを入れたくなりますよ。
バカボンのパパより弱いので、きっちり反撃を食らうあたりも「これでいいのだ」。
これは要するに、かわいい女の子版『天才バカボン』なんだな。
理不尽不条理系ギャグマンガをかわいい女の子主役でやってくれたら大歓喜ですよ。
学園生活とかいいよね、と無理やり読み取ることもできますが、そんな思考をぶち壊してくるノリの数々。
ただ、たまーにちょびーっとだけ、0.001%くらいだけ、人情話が入ってくるあたりもなんだかレトロと現在の融合を感じます。
平気で人を学校の窓から投げ捨てる(そして平気な)ノリも、昔のスラップスティックさを感じてほっとします。
この、脳に女の子たちが入り込んで思考を放棄させてくる心地良さ、ちょっとした麻薬です。
+チック姉さん | 作品紹介 | ヤングガンガン YOUNG GANGAN OFFICIALSITE
こちらで実際にすこし読むことができます。
特に2つのエピソードがWEBアニメ化されているので、そちらも是非。現時点ではかわいらしい話(?)がメインのアニメになっていますが、本編はもっと酷い(褒め言葉)キャラがたくさん出てきます。
作っているのは「侵略!イカ娘」の監督、水島努。なので帯にはこんなキャッチコピーがついていました。
「ノリと勢いだけでとてもいいアニメができました。水島努監督とTYOアニメーションズさんに感謝でゲソ」
ちゃっかり「イカ娘」人気に乗っています。
そこにしびれるあこがれる図々しい。
さすがだぜ! 「+チック姉さん」!
(たまごまご)