2004年の就任以来、去年までの7年間全てがAクラス。リーグ優勝3回、そして中日を53年ぶりに日本一に導いた名将である。もっと評価されていいはずなのに「人気がない」「マスコミ受けが悪い」というマイナス面も毎年のように言われていた。なぜ人気がないのか?落合が間違っているのか? その疑問に迫ったのがテリー伊藤著『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』だ。
<GDPは中国に追い越され、このままズルズルと落ちていきそうな日本を救うのは「死んでも1番になってやる」という「落合力」しかないのである>と断定するなど、テリー伊藤らしい強引な話法で展開される落合論。大好きな長嶋茂雄との比較など熱く語るテーマがある一方で、冷静な分析も多い。
解任報道があった22日、いくつかのニュース番組で中日ファンへのインタビューがされていたが、年配の方ほど「やっと辞めてくれたか」と語り、若い人ほど「えーなんで? せっかく強くしてくれたのに」と驚きや残念な表情を見せていたのが印象的だった。このことをテリー伊藤も以前から感じていたようで、<年配者には(落合)不支持者が多く、若い人たちに支持が増えているというのは、落合監督がプロ野球に新しい価値観を次々に持ち込んだことこと深いかかわりがあるのではないか>と説く。
本書全体を貫くのは「革命者」としての落合博満評だ。2000本安打を達成して名球会入りの資格を得たにもかかわらず、自ら断りを入れたことなどは古くからの野球ファンには許せない「革命者・落合」ならではのエピソードだが、監督・落合として実行した改革も数多い。