日本酒をいざ飲んでみようと思っても、なんか吟醸とか純米とか本醸造とかいろいろな種類が出てきてよくわからないという方もいるのではないでしょうか? というわけで今回は、日本酒の種類について説明していきたいと思います。

純米とか本醸造とか吟醸は「特定名称」と呼ばれています。
なので、純米酒や本醸造酒や吟醸酒のことを「特定名称酒」と言います。これらは原料や製造法の違いでつけられるもので、お酒の優劣を決めるものではありません。では、何がどう違うのでしょうか。まずはリストを見てみてください。

本醸造酒
純米酒
特別本醸造酒
特別純米酒
吟醸酒
純米吟醸酒
大吟醸酒
純米大吟醸酒

この8個が特定名称酒と呼ばれるものです。もちろんそれぞれ製法が違います。
では、順番に解説していきましょう。

STEP1:純米とそれ以外にわける

とにかくこの特定名称に「純米」とついているものと、ついていないもの。これで区別をしましょう。純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒と本醸造酒、特別本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒の2つのグループにわけて考えるのです。

日本酒はお米から作られているというイメージがあります。正確にはお米と米麹ですね。
もちろんそれは正解なんですけれども、100%そうだというわけではありません。実は、お米と米麹以外にも、醸造アルコールという日本酒以外のアルコールが混じったお酒があります。醸造アルコールというと化学的に合成されたお酒のようなイメージがありますが、ペットボトルとかで売られている焼酎をイメージするといいでしょう。それが、日本酒に入っているものが、「純米」とついていないものです。そう、本醸造酒、特別本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒にはこの醸造アルコールが添加されているのですね。

なので、お酒を見たときに「純米」と書いてあればお米だけで造られたお酒。
書いていなければ醸造アルコールが少し入っているお酒となります。

STEP2:精米歩合で分ける

精米歩合とは、お米をどれだけ削ったかの割合です。例えば精米歩合70%だったら、70%になるまで削る、つまり玄米の状態から30%ほど削るということを意味します。普段我々が食べる白米は、精米歩合にすると90%ぐらいになります。

お酒を造るお米は、実は食用のお米ではありません。酒造好適米という、酒造りに適したお米を使っています。
これらのお米は心白というお米の芯の部分が通常の食米よりも大きいのが特徴になります。

お酒を造るには、この心白が重要なのです。心白以外の部分は、乱暴に言ってしまうと雑味に分類されてしまうのです。従って、心白以外の部分は削ってしまうと、雑味のないすっきりとしたお酒になります。

日本酒は、例外もありますが、だいたいこのお米を30%削る、精米歩合が70%以下で造られます。そしてその精米歩合が60%になると(つまり、40%を削ってしまうと)そのお酒は特別な名前がつきます。
ということで、精米歩合70%から60%の間の日本酒は本醸造酒、純米酒と呼ばれます。そして60%以下になると、これは特別なお酒だということで、特別本醸造酒、特別純米酒と呼ばれるお酒になるのです。

さらにこの精米歩合60%以下のお酒のうち、吟醸造りという、特別に吟味をして低温じっくり造ったものを「吟醸酒」と言います。これが純米酒でなおかつ吟醸酒の条件を満たしていると、純米吟醸酒となるのですね。

そしてさらに精米歩合が50%を切ると、大吟醸酒になります。もちろん、これが純米酒でなおかつ大吟醸だった場合には純米大吟醸酒となるのです。


STEP3:まとめ

というわけで、表にしてまとめてみるとこんな感じです。


醸造アルコール入り   純米       精米歩合
本醸造酒        純米酒      70%以下(※)
特別本醸造酒     特別純米酒    60%以下
吟醸酒         純米吟醸酒    60%以下、吟醸造り
大吟醸酒        純米大吟醸酒   50%以下、吟醸造り

(※)現在では純米酒は精米歩合の制限が課せられていません。精米歩合が70%以上でも純米酒を名乗ることはできるようになっています。

ここまできたら、「いったいどれが美味しいの?」と疑問に思う方も多いでしょう。ですが、これは難しい問題で、そもそも好みは人によって違うのですから、これが一番美味しい! と言うことはできません。飲んでみて美味しいものが、その人にとっての美味しいお酒になるでしょう。

ちなみにお値段は、精米歩合が低くなるほど、大吟醸系に近くなるほど高くなります。お米を削るのは実は結構大変な作業なのです。なので「高級なお酒」は大吟醸酒や純米大吟醸酒となるでしょう。

さて、ここで注意したいのがこの本醸造などの醸造アルコール入りの日本酒です。ここで使われている醸造アルコールは、決してお酒を薄めて量を稼ぐために使われているわけではない、ということに注意してください。戦後間もない頃のお米が不足していた時代には、醸造アルコールを使ってお酒を3倍に薄める「三増酒(三倍増醸清酒)」というお酒がありました。これはお酒を薄めて多くの人に飲んでもらうためのお酒だったので、そう言われても無理はありません。

かの名作料理漫画『美味しんぼ』54巻でも痛烈にそのことを批判し、また本醸造酒などに対しても「お酒を薄めるだけ」と批判していました。ですが、今はこの美味しんぼ54巻が出た1996年とは違います。現在造られているお酒は、本醸造酒といってもそんなに悪いものじゃないですよ、と言いたいのです。

本醸造酒や吟醸酒では、三増酒の時代と違って、入れていい醸造アルコールの量が決められています。なので、そう無節操に醸造アルコールが入れられているわけではありません。

醸造アルコールを入れると、お酒の味は淡麗ですっきりとしたものになります。実は江戸時代から、日本酒に他のお酒(当時は柱焼酎という焼酎を使うのが主流でした)を入れるということは行われていました。これは貯蔵時や輸送時の変質を防止したり、くどいお酒をマイルドにする目的で入れられていたようです。そう、味わいをすっきりとしたものにするために入れていたのですね。

さらに醸造アルコールを入れると、香りを引き出すことができます。これはとくに吟醸酒で、もろみというお酒のもとになっているものを搾る(搾ったものがお酒に、残った物が酒粕になります)前に醸造アルコールを添加すると、本来は酒粕に行ってしまう芳香をアルコールによって抽出することができ、お酒にその成分を残すことができるからです。この辺が、お酒を造る職人さん(杜氏さん)の腕の見せ所なわけです。杜氏さんによっては、この醸造アルコールで香りだけではなく、お酒の甘みや旨味を引き出したりするのですね。

だから、美味しんぼの作中でも「この素晴らしい吟醸酒や大吟醸に、アルコール添加をするのが解せない」と言っているのですが、それは現在では違うところも多いですよ、というわけなのです。

これらの特定名称酒はどれもこれも美味しいものです。なので、醸造アルコールが入っていない方がいいんじゃないかとか、純米大吟醸の方がいいんじゃないかとか、先入観に惑わされず、なるべく自分の舌で確かめて好みのお酒を探すようにしましょう。(杉村 啓)