はじめてお手紙いたします。ぼくは愛知県に住む、しがないフリーライターです。
さてこのたびは、『ドアラのひみつ』、『ドアラのへや』に続く3冊目のご本を出版されたそうで、おめでとうございます。じつはぼくも目下、3冊目となる著書を準備中なのですが、いままでの2冊とは違う新機軸をひねり出そうと四苦八苦しているところです。
ドアラ先生も新刊となる電子書籍『コアラ坂』を出すまでには、その書名が示すとおりかなりのご苦労があったようですね。いまやナゴヤドームの名物となっている試合でのバク転……いや、先生いうところの宙返りがなかなか決まらず、二軍での調整を命じられ、真夏のナゴヤ球場で猛練習をされたとか。名古屋の夏はただでさえ暑いのに、屋根も空調のないナゴヤ球場のこと、先生が《正直、死ぬかと思いました。/二軍選手と一緒に全力アップをやってまざまざとプロ野球選手のすごさを感じさせられました》と書かれていたのも当然でしょう。それでも先生はそれからまもなく一軍に復帰、翌日には見事に宙返りを決めましたね(英智選手からは「今日のは鋭さがない」と言われたそうですが……)。
昨年はチーム自体、苦しい戦いが続きましたね。それでも秋に入り快進撃が続き、最終的にペナントを名古屋に持ち帰ってきてくれて本当にうれしかったです。日本シリーズは惜敗しましたが、それでも、お世辞にも好調とはいいがたいあの打線で第7戦までつなげたのは見事だと思います。それにしてもシリーズ直後にドアラ先生が入院、手術をされたと知ってびっくりしました。
ところで、今回のご本は電子書籍のみの出版と、版元のPHP研究所さんもまた思い切ったことをしましたね。前作、前々作も電子書籍化されていますが、その形式は紙の書籍(文章は横書き)をそのまま電書に落としこんだという感じで、パソコンの画面上で読むにはちょっと読みにくかったです。それが『コアラ坂』の文章は縦書きで、紙の本でいうところの見開きがパソコン上でもそれとして再現されており、ほとんど違和感なく読み進めることができました。
巻末のインタビューページに登場しているゲストも、ジャーナリストの津田大介さんと、17年ぶりに現場に復帰したドラゴンズの高木守道新監督と豪華ですね。津田さんが東京出身ながらドラファンだということは以前から知っていたのですけれども、ファンになるきっかけというのは本書でのインタビューで初めて知りました。ドアラは元祖ソーシャルメディアであるという津田さんの分析には、うなづかされることも多々です。いわく、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアからは、それを使う人のパブリックな部分だけでなく私生活や趣味、周囲の人との接し方の違いなど多面性が見えると。ドアラもまた、従来のマスコットたちのように単にファンへ愛嬌を振りまくだけでなく、選手に絡みに行ったり、失敗して落ちこむという姿を見せたりと、多面的な像を示すことに成功したからこそ多くの人から愛され、ソーシャルメディア的な存在になりえた……というのです。
《だから、これからも「作ろう」としないで、今のままの「人間らしい」ドアラをずっと見せてくれれば、これから先きっと、10年も20年も、ずっと長く愛されるキャラクターになってくれると信じています》(インタビューでの津田さんの発言)
ただ、ぼく個人としては、ドアラ先生にはもうちょっと神秘的なところもあってもいいんじゃないかという気もします。
ともあれ、今シーズンは監督・コーチ陣もユニフォームも変わり、また川上憲伸選手や山崎武司選手といったベテランが復帰するなど、新たな体制のもとドラゴンズがどんな活躍を見せてくれるのか期待しております。ユニフォームといえば、その発表会をウェブ中継で見たときには、何だかスワローズのユニフォームみたいだなあ(とくにビジター用が)と思ったりもしたのですが、ドアラ先生が本書の表紙をはじめ各ページで着ているのを見てだんだん目になじんできました。そもそも今回採用されたチームカラーは、1954年の現時点で唯一の完全優勝時(リーグ優勝+日本シリーズ制覇)のユニフォームに使われていたというドラゴンズの伝統色ですもんね。
最後に、いよいよ今月末(3月30日)に迫った2012年シーズンのドラゴンズ開幕戦では、愛知県出身の女優・武井咲ちゃんが始球式を務められるそうですね。どうぞよろしくお伝えください(あ、ぼくのなかではもちろん、「ドアラ先生>>>越えられない壁>>>咲ちゃん」なのでご心配なく)。それでは、先生の今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます。とはいえ手術してからまだ日が浅いのですから、けっして無理なさらず、くれぐれもご自愛くださいませ。
――地元の一ファンより 草々
(近藤正高)